「iDeCoは元本割れするからやめたほうがいい」「元本確保型は意味ない」といったiDeCoの評判を聞き、利用すべきか迷っている方は多いのではないでしょうか。
今回は、iDeCoで元本割れが起きる要因や元本確保型・元本変動型の違いについて解説します。もし元本割れしてしまった場合の対処法についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
iDeCoで元本割れが起きる2つの要因を確認しよう
まずは、iDeCoで元本割れが起きる2つの要因をそれぞれ確認しましょう。
- 手数料負担の大きさ
- 経済状況による商品の価格変動
上記の要因について解説します。
手数料負担の大きさ
iDeCoで元本割れが起きる要因の1つとして、手数料負担の大きさが挙げられます。
運用益を手数料が上回ると、実際の投資収益よりも手数料負担が大きくなり、結果として元本が減少してしまいます。これは、手数料負担が高い場合や運用益が少ない場合に起こり得るでしょう。
iDeCoを運用する上で発生する主な手数料は、加入手数料と口座管理手数料の2つに分けられます。それぞれの手数料について、詳しく見てみましょう。
必要な手数料その1:加入手数料
iDeCoにおける「加入手数料」は加入時に一度のみ支払う手数料で、2,829円(税込)が必要です。この手数料は、iDeCoを実施している国民年金基金連合会に支払われます。
この加入手数料は、iDeCoを始める方に共通してかかる費用であり、どの金融機関を選択しても同じ金額となります。
必要な手数料その2:口座管理手数料
口座管理手数料は「収納手数料・事務委託手数料・運営管理手数料」の3つが発生します。
まず「収納手数料」は積立を行う際に発生するもので、掛金を支払う際に収納手数料105円が必要です。なお、積立を行わない月は手数料が発生しないため、年払いを選択した場合、掛け金を支払った月のみ発生します。
次に挙げた「事務委託手数料」は毎月発生する手数料で、66円がかかります。事務委託手数料は、掛金を支払わなかった月でも発生するため注意しましょう。
最後の「運営管理手数料」は、選択した金融機関によって発生する手数料で、0円から440円が必要です。金融機関によって金額が異なるため、契約前に確認しておきましょう。
経済状況による商品の価格変動
iDeCoで元本割れが起きる要因の2つ目に、経済状況による商品の価格変動が挙げられます。
株式や債券などの投資商品は、市場の需要と供給によって価格が変動します。景気の好転や企業業績の上昇などのポジティブな要因は価格を押し上げますが、景気後退や企業の業績悪化などのネガティブな要因は価格を下げる可能性があるでしょう。
そのため、iDeCoで選択した商品の価格が変動することで、一時的な元本割れが生じることがあります。しかし、長期間運用することで市場の変動を乗り越えられる可能性もあるため、長期的な目線で取り組むことが大切です。
iDeCoの元本確保型は意味ない?2種類の商品やおすすめ商品を解説
iDeCoの商品は、大きく分けて「元本確保型」と「元本変動型」の2つがあります。
それぞれの商品の特徴について、確認しましょう。
元本確保型の特徴
元本確保型は、購入した金額を下回ることが基本的には起こらない商品を指します。そのため、元本割れが起こりにくいことが特徴です。
元本確保型の代表的な商品は、定期預金や保険が挙げられます。これらは大きな利益を生み出すことはないものの、所得控除や受取時の控除など、iDeCoの税制優遇を活用できることが最大のメリットです。
このような商品は、リスクを最小限に抑えたい方にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
ただし、利回りが非常に低いため、手数料が利益を上回ってしまう「手数料負け」の状態になる可能性もあるため、よく検討した上で選ぶことが大切です。
元本変動型の特徴
元本変動型は、購入した金額が保証されることはなく、運用成績によって資産が変動する商品のことを指します。iDeCoでいうと、投資信託が該当します。
投資信託は、投資家から集めた資金を資産運用のプロが代わって管理し、その成果に応じて利益が分配される仕組みです。そのため、投資経験が少ない方や投資に関する知識がない方でも、少額から手軽に始められる特徴があります。
ただし、投資信託は市場の変動によって資産価値が変動するため、リスクを伴います。投資信託のような元本変動型の商品は、長期的な視野を持ち、市場の変動に耐える余裕がある方やリスクを取りたい方に適しているでしょう。
iDeCoが元本割れしてしまった場合の対処法3選
iDeCoで積立や運用をしていく中で、元本割れしてしまうケースは少なくありません。もし元本割れしてしまった場合の対処法として、今回は次の3つのポイントを取り上げます。
- 経済状況を確認しつつ運用を継続する
- ポートフォリオを見直す
- 投資先を分散する
それぞれの項目について解説します。
経済状況を確認しつつ運用を継続する
iDeCoが元本割れしてしまった場合の対処法の一つとして、経済状況を確認しつつ運用を継続することが挙げられます。
元本割れが発生しても、同じ商品に投資を続けることが有効です。なぜなら、投資を継続することで、将来的に商品の価格が上昇する可能性が高まるからです。
市場において景気が常に良好であることはあり得ないように、逆に不景気が永久的に続くこともあり得ません。例えば、近年はコロナウイルスの影響で各国の株価が低くなっていましたが、現在は回復しつつあります。このように、経済状況が悪化していても、多くの場合、商品の価値はいずれ回復すると考えられるでしょう。
また、iDeCoの元本変動型商品では、ドルコスト平均法を利用して投資を行います。これは、定期的に同じ金額で商品を購入する方法であり、価格が低い時には多く、高い時には少なく購入することでリスクを分散できる仕組みです。
上記のことから、iDeCoで元本割れが起きたからといって、慌てて資産を他の金融機関に移すのは避けたほうが良いでしょう。移転には手数料が発生し、さらなる損失を招く可能性があるため、経済状況を見極めつつ、冷静に運用を継続することが重要です。
ポートフォリオを見直す
iDeCoが元本割れしてしまった場合の対処法として、ポートフォリオを見直すことも欠かせません。具体的には、毎月支払って購入している金融商品の種類や、それらの購入比率を変更することが大切です。
元本割れを防ぐ方法の1つは、リスクの低い商品に資産を移すことです。これにより、リスクの高い商品の運用を減らしてリスクの低い商品の割合を増やし、元本割れを最小限に抑える効果が期待できます。
なお、リスクの度合いは金融商品によって異なるため、注意深く選択することが大切です。できる限りリスクの低い商品を選択することで、元本割れのリスクを軽減できるでしょう。
ポートフォリオの見直しによる資産配分の変更には手数料がかからないため、元本割れが発生した場合、速やかにリスクの低い運用に切り替えることも検討してみてください。ポートフォリオの見直しを行う際には、市場の状況やリスクの度合いを十分に考慮した上で、スムーズな対応が求められます。
投資先を分散する
iDeCoが元本割れしてしまった場合、これ以上の損失を防ぐためにも、投資先を分散することが対処法の一つとして挙げられます。大きな元本割れを防ぐためには、1つの投資信託にだけ投資するのではなく、複数の異なる投資先に分散投資することが推奨されます。
投資信託は複数の株式などがパッケージ化されているため、1つ保有するだけでも分散投資を実現できますが、投資対象が国内か海外か、債券か株式かなど、さまざまな商品を組み合わせることで、より効果的な分散投資が可能です。
分散投資でリスクを抑える一つの方法として、価格変動リスクが低い債券などの商品を組み入れたバランス型の投資信託を選択することもおすすめです。また、価格変動にストレスを感じる方は、ポートフォリオの一部に定期預金や保険などの元本確保型の商品を組み合わせることで、安定した投資効果を得られるかもしれません。
これにより、リスクの分散化を図り、元本割れのリスクを軽減できるでしょう。投資先の分散は、元本割れのリスクを管理し、安定した資産形成を目指す上で重要な戦略です。
iDeCoを始める時におすすめの証券会社
iDeCoを始める時におすすめの証券会社を紹介します。
SBI証券
SBI証券は、iDeCo口座開設数1位の証券会社です。
セレクトプランでは、「eMAXIS Slim」シリーズを含むインデックスファンドを17本に投資することができます。
マネックス証券
マネックス証券は、オリコン顧客満足度®ランキング「iDeCo証券会社」部門で4年連続総合第1位を獲得しています。
「NASDAQ100指数」に連動するiDeCo商品を買うことができるのはマネックス証券だけなので、「米国ナスダック100指数」に連動する商品を買いたいならマネックス証券で口座開設を行いましょう。
松井証券
松井証券は、老舗のネット証券です。
「eMAXIS Slim」と「楽天バンガード」シリーズの取り扱いがあるので、SBI証券と楽天証券のいいところ取りをした投資を行いたい人におすすめです。
iDeCoの元本割れに関するよくある質問
ここでは、iDeCoの元本割れに関してよくある質問をまとめました。
iDeCoで元本割れしたら借金を抱えてしまうの?
元本割れとは、商品の価格が変動し、購入時の価格を下回ることをいいます。
そのため、iDeCoで運用中の商品が元本割れしたからといって、借金を抱えてしまうことにはなりません。
iDeCo(確定拠出年金)が元本割れしたらどうなる?税金は発生する?
iDeCoで積立や運用を行っていた商品が元本割れした場合、税金は発生しません。これは、課税口座で投資している場合も同様です。
なお、課税口座で元本割れした場合は損益通算できますが、iDeCoの場合は損益通算できないため、注意しましょう。
iDeCoは8割の確率で元本割れするって本当?まとめ
今回は、iDeCoで元本割れが起きる原因や2種類の商品の特徴、もし元本割れしてしまった場合の対処法などを紹介しました。元本割れが起きる主な原因は、手数料負担の大きさと経済状況による商品の価格変動が挙げられます。
経済状況によって投資商品の価値は変動するため、元本割れを完全に防ぐことは難しいですが、とにかくリスクを抑えて運用したい場合、元本確保型の商品を選ぶことも選択肢の一つです。ただし、利回りが低いため手数料負けするリスクがあることに注意しなければなりません。
もし元本割れが発生してしまった場合は、まずは様子を見ながら運用を継続し、必要に応じてポートフォリオの変更や投資先の分散なども視野に入れてみましょう。