投資家が「信用取引はやめとけ」と言っているのを聞いて、取引すべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。とはいえ、信用取引はレバレッジをかけた取引が可能なため、魅力的な投資方法の一つともいえます。
今回は、信用取引の概要や「やめとけ」と言われる理由、取引で失敗を防ぐコツなどを解説します。信用取引を用いた資産運用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
信用取引とは?分かりやすく解説
信用取引とは、現金や株式を証券会社に担保として預け、その担保を基にして証券会社からお金や株式を借りて売買を行う仕組みです。通常の現物取引よりも最大で約3.3倍までの取引が可能で、ハイリターンを狙う手段として注目されています。
メリットとして、少ない資金で大きな取引ができる、ハイリターンが期待できるなどの点が挙げられます。下落相場で利益を狙う「空売り」や、デイトレードによる手数料削減も可能です。
ただし、ハイリターンが期待できる反面、ハイリスクな取引になる点に注意が必要です。借金の発生や金利の支払い、担保価値の減少による追証の可能性があります。株価の下落による損失を抱えた場合、追加保証金を差し入れる必要が生じ、追加資金の手当てが求められます。
このことから、信用取引は慎重に行う必要があり、リスクとリターンのバランスを理解した上で活用することが大切です。
失敗談から分かる、信用取引がやめとけと言われる6つの理由
信用取引の失敗は、大きな損失や借金につながる可能性があります。信用取引では担保金の3倍の株式を取引可能ですが、失敗すると資産以上の損失が発生します。
例えば、10,000株の資金で30,000株を購入すると、20,000株は借金をして購入するのと同じです。株価の下落で追証が発生した場合、数日以内に支払わないと自動売却となり、最悪の場合、多額の借金を抱えることになってしまうでしょう。
このようなリスクを伴う信用取引ですが、投資家が「信用取引はやめとけ」という主な理由は以下の通りです。
- ハイリスクハイリターンである
- 手数料を支払う必要がある
- 株主優待制度は受けられない
- 制度信用取引には決済期限がある
- 逆日歩が発生する場合がある
- 売建ては配当落調整額を支払う必要がある
それぞれの理由について、詳しく見てみましょう。
やめとけと言われる理由①ハイリスクハイリターンである
信用取引はハイリスクハイリターンの性質を持っており、レバレッジを駆使し、最低委託保証金30万円で約3.3倍までの取引が可能です。そのため、手元の資金以上の取引ができる反面、損失も拡大しやすいのが特徴です。
例えば、100万円の担保があれば最大約300万円まで取引できます。しかし、株価の下落によって追証が発生し、口座が自動売却される可能性もあるため、慎重な取引が不可欠です。
やめとけと言われる理由②手数料を支払う必要がある
資金や現物株を担保に信用取引を行う場合、銀行からお金を借りる場合の手数料と同じように、証券会社から借りた金額に応じた金利が発生します。
また、売りから取引に入る場合も例外ではなく、株を証券会社から借りて売るため、貸株料が発生する点に注意が必要です。
銘柄や証券会社によって異なりますが、高い場合には10.0%を超える貸株料がかかります。手数料は投資収益に大きな影響を与えるため、慎重な計画が欠かせません。
やめとけと言われる理由③株主優待制度は受けられない
信用取引で購入した株式は証券会社名義となり、実際の保有者は投資家ではないため、信用取引で保有している銘柄の株主優待は受けられない点に注意が必要です。株主優待を得るためには、現物株を購入し、権利確定日に株主でなければなりません。
現物株を取得するためには現引きという手法が使われ、信用取引の場合は買建てした銘柄を現物株で清算することを指します。現引きを行うためには、信用取引口座に余裕を持っておき、不足分は資金を投入する必要があります。そのため、株主優待を狙う場合には慎重な資金計画が求められるでしょう。
株主優待の権利を得るために、上記で紹介した同銘柄を現物取引と信用取引で売買する「優待クロス」と呼ばれる手法で取引する方法もあるため、検討してみてはいかがでしょうか。
やめとけと言われる理由④制度信用取引には決済期限がある
信用取引には、制度信用取引と一般信用取引の2種類が存在します。
制度信用取引は、数ヵ月の短期売買が一般的です。金利や貸株料においてメリットがある反面、短期の売買は経験を積む必要があり、制度信用取引で定められている6ヵ月の決済期限を守るのが難しい場合も多いでしょう。
また、取引できるのは東証と名証上場銘柄で取引所が基準を満たす銘柄に限定されることも特徴です。
一般信用取引の場合は全上場銘柄を売買可能で、決済期限は顧客と証券会社の合意に依存します。
やめとけと言われる理由⑤逆日歩が発生する場合がある
信用取引で売建てを行う際、「逆日歩(ぎゃくひぶ)」と呼ばれる追加費用の支払いが必要になる可能性があります。
制度信用取引における逆日歩とは、証券会社が売建て用の株式を調達する際の費用です。売りが買いを上回ると株式不足が生じるため、証券会社は株を外部から借り入れる必要があります。
逆日歩の発生は取引終了後の差し引きで決まり、その値段は翌営業日の入札によって決まります。銘柄によっては高額な逆日歩が発生する可能性もあるでしょう。
逆日歩の額は株価に応じて異なり、1株あたりの逆日歩は4桁の銘柄では約0.15円から0.6円、5桁の銘柄では0.6円から5円程度です。逆日歩は事前に予測が難しく、銘柄の売買傾向によって影響を受ける要素となります。
やめとけと言われる理由⑥売建ては配当落調整額を支払う必要がある
信用取引において、売建てポジションを持つ投資家は配当落調整額を支払う必要があります。
現物株の場合、権利確定日に株式を保有していると配当金を受け取れます。しかし、信用取引で売建ての場合、制度信用取引・一般信用取引のそれぞれで以下のように徴収されるため注意が必要です。
- 制度信用取引:配当金から源泉徴収税を差し引いた額
- 一般信用取引:配当金相当分
権利確定日の翌営業日には「配当落ち」と呼ばれる現象が発生し、株価が配当分だけ調整されることがあります。通常は下落傾向が見られ、買建ての場合は含み益が減少または含み損が拡大する可能性があり、売建ての場合は逆のケースとなる可能性が高いため、配当落調整額についても考慮が必要です。
「やめとけ」と言われる信用取引で失敗を防ぐ5つのコツ
「信用取引はやめとけ」と言われがちですが、以下のコツを押さえて運用することで、信用取引における大きな失敗を防ぎやすくなります。
- テクニカル分析を学ぶ
- 信用取引残高を定期的に確認する
- 早期のロスカットでリスク回避を徹底する
- 追加保証金が発生しないように注意する
- 信用二階建て取引のレバレッジに注意する
それぞれのポイントについて解説します。
信用取引のコツ①テクニカル分析を学ぶ
信用取引で失敗を防ぐためのコツの一つは、テクニカル分析を学ぶことです。テクニカル分析では、過去の銘柄や市場の値動きを分析し、将来の値動きを予測します。株価チャートの過去の動きを分析するため、企業の業績や経済の状況を深く理解しなくても適用できる特徴があります。
ただし、過去の動きが将来に必ずしも反映されるとは限らないため、市場全体の動きによる個別銘柄への影響には考慮が必要です。
また、テクニカル分析のほか、企業の業績や成長性について各種指標を用いて銘柄の可能性を評価するファンダメンタル分析があります。状況に応じて分析手法を使い分ける必要がありますが、短期の売買が一般的である信用取引においては、市場の変動に対応しやすいテクニカル分析が適しているでしょう。
信用取引のコツ②信用取引残高を定期的に確認する
信用取引においては、信用取引残高の定期的な確認が欠かせません。信用取引残高とは、買建てと売建ての残高をまとめたものです。
週ごとに発表される「銘柄別信用取引残高」や、日々提供される「日証金貸借取引残高」を確認し、特定銘柄における信用取引の動向や融資・貸株の残高などを把握できます。貸借倍率は特に注視すべき指標で、1より大きい場合は将来的な売り需要が、逆に小さい場合は買い需要が予測されます。
信用取引のコツ③早期のロスカットでリスク回避を徹底する
信用取引においては、株価が急激に変動する場合があります。特に、流動性の低い銘柄では大きなボラティリティが生じる可能性があるため、早期のロスカットが重要です。
株価が期待した方向と逆に動いた場合や、急騰後の急落が起きる場合には、損失を最小限にとどめるためにもロスカットの検討が欠かせません。
信用取引のコツ④追加保証金が発生しないように注意する
信用取引では、売買に際して担保価値の約3.3倍までの取引が可能ですが、含み損が発生すると担保価値から差し引かれます。
この結果、担保価値が減少し、最低委託保証金率を下回ると追加保証金(追証)の支払いが必要です。
また、現物株を担保にしている場合は、信用建て銘柄だけでなく担保となる現物株価も注意しなければなりません。現物株価が下落すれば担保価値が減少し追証が発生するため、早期のロスカットや信用余力の確認、新規信用建て時の慎重な取引が重要です。
信用取引のコツ⑤信用二階建て取引のレバレッジに注意する
信用取引では、現物株を代用有価証券として使いますが、同一銘柄で信用買いを行う場合には最大3.6倍のレバレッジをかけられます。
この場合、現物株の価値が上昇すれば含み益も大きく発生しますが、逆に価値が下落すると含み損も急激に増えるため注意が必要です。
信用二階建て取引では利益も損失も急激に拡大するため、慎重な取引が求められます。特に価格変動が激しい銘柄や市場では、リスク管理を徹底し、注意深く取引することが欠かせません。
信用取引を始めるときにおすすめの証券会社
信用取引を始めるときにおすすめの証券会社を紹介します。
SBI証券
新規建 | 買建 | ◯ |
売建 | ◯ | |
売建銘柄数 | 約3,287銘柄 | |
返済期限 | 長期 | 無期限 |
短期 | 15営業日 | |
1日 | 当日 | |
金利※買建のみ | 長期 | 2.80% |
1日 | 0% | |
貸株料 | 長期 | 1.10% |
短期 | 3.90% | |
1日 | 0 |
SBI証券は業界トップのシェア率を誇っており、手数料が格安です。
信用取引サービスは「無期限」「短期」「1日」の3種類があるため、自分の目的に合ったコースを選ぶことができます。
auカブコム証券
新規建 | 買建 | ◯ |
売建 | ◯ | |
売建銘柄数 | 約4,069銘柄 | |
返済期限 | 長期 | 原則, 10年 |
短期 | – | |
1日 | 当日 | |
金利※買建のみ | 長期 | 2.79% |
1日 | 1.80% ※ただし100万以上の場合は0.00% | |
貸株料 | 長期 | 1.50% |
短期 | – | |
1日 | 1.80% ※ただし100万以上の場合は0.00% |
auカブコム証券はau経済圏と相性が良いネット証券です。信用取引ができる売建銘柄数が多いことも特徴です。
auカブコム証券では、条件を満たすとPontaポイントが貯まります。
\ au経済圏の人におすすめ /
また、「au IDの登録で、現物および信用取引の手数料が1%割引」「auカブコム証券でKDDIの株式を100株以上保有すると、現物および信用取引の手数料が最大15%割引」などauユーザーやKDDI株主向けの特典もあります。
松井証券
新規建 | 買建 | ◯ |
売建 | ◯ | |
売建銘柄数 | 約1,034銘柄 | |
返済期限 | 長期 | 無期限 |
短期 | 14営業日 | |
1日 | 当日 | |
金利※買建のみ | 長期 | 4.10% |
1日 | 0 | |
貸株料 | 長期 | 2.00% |
短期 | ※銘柄によって違います | |
1日 | 0 |
松井証券は信用取引のデイトレコストが業界最安値となっています。
また、新興市場で人気の銘柄が空売りできるプレミアム空売りサービスも提供しています。
\ デイトレするなら松井証券 /
マネックス証券
新規建 | 買建 | ◯ |
売建 | ◯ | |
売建銘柄数 | 約3,865銘柄 | |
返済期限 | 長期 | 無期限 |
短期 | 15営業日 | |
1日 | 当日 | |
金利※買建のみ | 長期 | 3.47% |
1日 | 1.80% ※ただし100万以上の場合は0.00% | |
貸株料 | 長期 | 1.10% |
短期 | 3.90% | |
1日 | 1.80% ※ただし100万以上の場合は0.00% |
マネックス証券では、信用取引と貸株サービスの併用が可能となっています。現物株を担保に取引しつつ、貸株金利の受取も可能です。
また、株主優待の取得で株価下落リスクを抑える「つなぎ売り」に最適な短期信用サービスも提供しています。
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信用取引についてよくある質問
ここでは、信用取引に関してよくある質問をまとめました。
信用取引をするか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
信用取引は簡単にやめられないって本当?
結論からいうと、信用取引を辞めるのは簡単ではないとされています。
最大3.3倍のレバレッジが利用できる反面、損失が急激に広がり、資産を超えるリスクもあります。これが原因で多くの人が負債をゼロにするまで引き続き取引を続け、なかなか手を引けないケースもあるようです。
損失を拡大させないためには、今回紹介した取引における5つのコツを参考に、できる限りリスクを押さえた取引がおすすめです。
レバレッジ1倍で取引することは可能?
信用取引は最大3.3倍のレバレッジが可能ですが、必ずしもその全てを利用しなければならないわけではありません。
たとえば50万円の株を信用取引する場合、同じ額の保証金で、1倍のレバレッジによる取引が可能です。
高いレバレッジを利用せず、リスクを最小限に抑えつつ信用取引のメリットを享受し、慣れてから高いレバレッジを試すのも一つの方法です。
信用取引で借金地獄にならないためにはどうすべき?
信用取引における借金地獄を回避するには、リスク管理を徹底することです。
今回紹介したテクニカル分析の習得や信用取引残高の定期確認、早めのロスカットなどを実践し、慎重な取引で堅実な投資を心がけましょう。
信用取引はやめとけと言われる理由まとめ
今回は「信用取引はやめとけ」と言われる理由や、大きな損失を防ぐための信用取引のコツなどについて解説しました。
信用取引はレバレッジを利用できる反面、相場が予想と逆方向に動いた場合の損失額が大きくなりやすいデメリットがあります。信用取引の特徴を十分に理解し、コツを押さえた取引方法を身につけた上で、将来の資産形成につながる資産運用に取り組んでみてはいかがでしょうか。