「iDeCoの加入中に転職や退職をし、何か手続きが必要なのでは?」と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。また、iDeCoに加入しておらず転職・退職した場合、企業型確定拠出年金(DC)から資産を移換できる可能性があります。
今回は、転職または退職・無職になった場合のiDeCoで必要な手続きについて解説します。
転職や退職にともない、iDeCoで必要な手続きが知りたい方、これまで未加入だったがiDeCoを利用しようか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
転職・退職・無職になったらiDeCoで必要な手続き
転職した場合や退職・無職となった場合、それぞれ必要な手続きが異なります。
以下より必要な手続きの内容を解説しますので、ご自身のパターンに当てはまるものをチェックしてください。
転職した場合にiDeCoで必要な手続き
前の会社を辞めて転職したときは「既にiDeCoに加入しているか」「企業型確定拠出年金に加入していたか」によって、それぞれの手続きが必要です。
iDeCoに加入済みのパターン
iDeCoに加入している状態で転職した際、転職先の企業型確定拠出年金(DC)に加入する場合は、iDeCoの管理資産を移換できます。ただし、移換と同時にiDeCoの加入者資格を失う点に注意しなければなりません。
また、iDeCoの資産を移換せずに企業型確定拠出年金(DC)に加入することもでき、その場合はiDeCoの継続加入が可能です。企業型確定拠出年金(DC)に加入しない場合も同様に、iDeCoに継続加入できます。
いずれの場合も移換にともなう書類の提出や被保険者種別の変更手続きなどが必要になるため、忘れずに行いましょう。
そのほか、転職先に確定給付企業年金(DB)がある場合、iDeCoからの移行は確定給付企業年金(DB)の規約に準じます。規約が個人別管理資産の受け入れを認めていれば、iDeCoの資産を移行できます。ただし、移行できるかは転職先の担当者に確認が必要です。
企業型確定拠出年金(DC)に加入していたパターン
iDeCoではなく企業型確定拠出年金(DC)に加入しており、さらに転職先の会社で企業型確定拠出年金(DC)に加入しない場合、iDeCoに資産を移換できます。
このとき、企業型確定拠出年金(DC)の加入者資格の喪失と資産の移換に関する手続きが必要です。さらにiDeCoに加入する場合は、iDeCoへの加入手続きも必要となります。
また、厚生年金基金や確定給付企業年金(DB)に加入しており、転職にともない年金制度が終了した場合は、以下の条件を満たすことでiDeCoへ脱退一時相当額もしくは残余財産を移換できます。
- iDeCoに加入している
- 厚生年金基金・確定給付企業年金(DB)の脱退もしくは終了から1年以内に清算と移換の手続きを行う
退職した・無職になった場合転職した場合にiDeCoで必要な手続き
前の会社を辞めて退職した・無職になった場合(国民年金第1号被保険者・国民年金第3号被保険者が該当)については、iDeCoに引き続き加入できます。
以下に該当する場合は、運営管理機関へ「加入者被保険者種別変更届」の提出が必要です。
- 第2号・第3号・第4号から第1号被保険者になった場合
- 第1号・第2号・第4号から第3号被保険者になった場合
転職・退職にともなうiDeCoへの移換手続きはいつまで?
企業型確定拠出年金(DC)に加入しており、転職や退職にともない企業型確定拠出年金(DC)の加入資格を喪失した場合、早めにiDeCoへの資産移換手続きを行うのがおすすめです。
ここでは、移管の手続きができる期間や手続きしない場合のリスクなどについて解説します。
確定拠出年金の移換手続きは6ヶ月以内
確定拠出年金の移換手続きは、転職から6ヶ月以内に行う必要があります。
移換手続きを行う際は、まず転職先企業の担当部署に連絡し、移換が可能かどうかを確認しましょう。その後、iDeCoに必要な書類を提出して加入手続きを行います。
移換行手続きの際はiDeCoへの加入資格の審査が行われ、1ヶ月から2ヶ月ほどかかると言われています。移換完了までに時間がかかるため、余裕を持って準備や手続きを進めることが大切です。
転職後にiDeCoへ資産移換手続きをしないとどうなる?
転職後、企業型確定拠出年金(DC)の加入資格を喪失したのにも関わらず6ヶ月iDeCoに資産の移換手続きをしなかった場合、以下のようなリスクがあります。
- 現金化され、国民年金基金連合会に自動的に移換される
- iDeCoの受給開始が遅れる
- 退職所得控除額が減る
iDeCoへの移換手続きをしなかった場合、企業型確定拠出年金(DC)の資金は現金化され、国民年金基金連合会に自動移換される仕組みです。この状態では資産が運用されず、物価上昇による価値減少が懸念されます。
さらに、自動移換の際は以下の手数料が発生するため注意しましょう。
手数料の発生タイミング | 手数料 |
自動移換 | 4,348円 ※特定運営管理機関3,300円・国民年金基金連合会1,048円 |
自動移換中(毎月支払いが必要) | 52円 ※特定運営管理機関 |
自動移換後の企業型確定拠出年金(DC)への資産移換 | 1,100円 ※特定運営管理機関 |
自動移換後のiDeCoへの資産移換 | 3,929円 ※特定運営管理機関1,100円・国民年金基金連合会2,829円 |
また、iDeCoで積み立てた資産の受給は原則60歳からですが、通算加入期間が10年以上でなければ受給できません。企業型確定拠出年金(DC)からiDeCoへの移換手続きが遅れると、その分iDeCoの受給開始時期が遅れる可能性もあります。
そのほか、自動移換期間は掛金拠出期間としてカウントされないため、自動移換された分の掛金拠出期間が短くなり、退職所得控除額が減ることにも繋がります。
手続きせずの放置していると資産が減少し、支払う費用が増加する可能性が高まるため、手続きを怠らないよう注意が必要です。
転職・退職・無職になった場合、iDeCoの掛け金上限が変動する
転職・退職・無職にともない、iDeCoの掛け金上限が変動する場合があります。これは、国民年金被保険者の種別変更や企業型確定拠出年金(DC)・確定給付企業年金(DB)の加入の有無によるものです。
転職後の状況によるiDeCoへの掛け金の上限は以下の通りです。
転職後の状況 | 月々の掛け金上限 | |
会社員 | 企業型確定拠出年金(DC)に加入する場合 | 20,000円 |
確定給付企業年金(DB)に加入する場合 | 12,000円 | |
企業型確定拠出年金(DC)・確定給付企業年金(DB)の両方に加入する場合 | 12,000円 | |
企業年金がない場合 | 23,000円 | |
公務員 | 12,000円 | |
自営業(個人事業主・フリーランス) | 68,000円 | |
専業主婦(夫) | 23,000円 |
iDeCoの金融機関を選ぶ際のポイント3つ
iDeCoに加入する場合は、自分で金融機関を選ぶ必要があります。金融機関によって特徴が異なるため、以下のポイントを参考に自分に合った金融機関を選びましょう。
- 手数料や信託報酬の安さ
- サービスやサポートの充実度
- 取扱商品の豊富さ
一つずつ解説します。
iDeCoの金融機関を選ぶ際のポイント①手数料や信託報酬の安さ
iDeCoの金融機関を選ぶ際、手数料や信託報酬の安さは重要なポイントです。毎月の口座管理手数料や信託報酬は金融機関ごとに異なり、年間で比較すると3倍もの差があるケースもあります。
そのため、金融機関を選ぶ際にはできるだけ低い手数料や信託報酬を提供している機関を選ぶことが重要です。
iDeCoの金融機関を選ぶ際のポイント②サービスやサポートの充実度
金融機関を選ぶ際には、サービスやサポートの充実度も重要です。会員サイトの使いやすさや操作性、問い合わせのしやすさなどを確認しましょう。
充実したサポート体制が整っている金融機関を選ぶことで、安心してiDeCoを利用できます。
iDeCoの金融機関を選ぶ際のポイント③取扱商品の豊富さ
金融機関を選ぶ際には、取扱商品の豊富さについても確認が欠かせません。
iDeCoは金融機関ごとに取り扱う商品が異なるため、自分のニーズや目標に合った運用ができる金融機関を選ぶことで、効果的な資産形成が可能となるでしょう。
iDeCoを始める時におすすめの証券会社
iDeCoを始める時におすすめの証券会社を紹介します。
SBI証券
SBI証券は、iDeCo口座開設数1位の証券会社です。
セレクトプランでは、「eMAXIS Slim」シリーズを含むインデックスファンドを17本に投資することができます。
マネックス証券
マネックス証券は、オリコン顧客満足度®ランキング「iDeCo証券会社」部門で4年連続総合第1位を獲得しています。
「NASDAQ100指数」に連動するiDeCo商品を買うことができるのはマネックス証券だけなので、「米国ナスダック100指数」に連動する商品を買いたいならマネックス証券で口座開設を行いましょう。
松井証券
松井証券は、老舗のネット証券です。
「eMAXIS Slim」と「楽天バンガード」シリーズの取り扱いがあるので、SBI証券と楽天証券のいいところ取りをした投資を行いたい人におすすめです。
iDeCoの転職・退職・無職に関するよくある質問
ここでは、iDeCoに関してよくある質問をまとめました。転職・退職・無職になった場合で資産の移換について不明な点がある方は、ぜひ参考にしてください。
転職後もiDeCoを続けるには?個人型から個人型への継続手続きは必要?
既にiDeCoに加入している場合、転職後も継続加入が可能です。
ただし、同じ個人型でも職種によって月々の拠出額上限が異なるため、継続にともなう手続きが必要です。特に、前職よりも拠出可能な掛け金が減少する場合は速やかに手続きしましょう。
もし上限を超える金額をiDeCoに拠出した場合、手数料として1,500円が引かれるほか、売却時に解約手数料が発生するため注意しましょう。
退職したらiDeCoの継続加入は可能?専業主婦や無職でも加入できる?
会社員や公務員として勤務しており、退職した場合でもiDeCoへの継続加入は可能です。
専業主婦や無職でも加入できますが、被保険者種別の変更手続きが必要になるため注意してください。
無職になったがiDeCoで運用するメリットはある?
無職になった場合でも、iDeCoの運用益は非課税でなおかつ受給時の控除を受けられる点はメリットといえます。
ただし、収入がなくなると所得税の支払い義務が発生しないため、iDeCoにおける掛け金全額が所得控除の対象となるメリットの恩恵は受けられません。
iDeCoの運用中に無職から会社員になった場合、必要な手続きは?
転職先の会社で企業型確定拠出年金(DC)に加入する場合、iDeCoの管理資産を移換できます。この場合、運営管理機関へ「加入者資格喪失届」の提出が必要です。
また、iDeCoの資産は移換させず、iDeCoでの掛け金拠出を継続することもできます。
失業保険受給中でもiDeCoでの積み立ては可能?
失業保険を受給している場合でも、iDeCoでの積み立ては可能です。
ただし、国民年金保険料の免除対象となっている場合は積立を停止する必要があるため、「加入者資格喪失届」を提出します。
また、届出をしなかった場合は還付される掛け金に対して手数料の支払いが発生するため、必ず手続きしておきましょう。
転職・退職・無職になった場合のiDeCoの対処法まとめ
今回は、iDeCoに関する転職・退職・無職となった場合に必要な手続きや、それぞれのケースで変動する掛け金の上限、金融機関の選び方などを解説しました。
手続きを怠ると受け取れる資産額が減少する可能性もあるため、転職・退職・無職にともなう手続きは早めに済ませることが大切です。記事の内容を参考に、スムーズに必要な手続きを終えられるように準備を進めましょう。