「iDeCoは60歳以降でも加入できるのか知りたい」「60歳以降から始めた場合、どんなメリットがあるのか知りたい」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
本記事では、iDeCoに60歳以上で加入した場合のメリットやデメリットを解説します。
60歳以降からiDeCoを始めたいと考えている方や、iDeCoを利用するメリットを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
iDeCoは60歳以降でも加入できる?
従来の制度では、iDeCoは60歳未満の方しか加入できませんでしたが、2022年5月1日に行われた法改正により、現在は65歳の方までiDeCoに加入できるようになりました。
加入できる期間が5年増えたことで拠出する掛金を増やせるため、より多くの掛金を積み立て、税負担を軽減できます。
例えば、企業型DCに加入していないサラリーマンの場合、月額2万3,000円、年額27万6,000円まで掛金の拠出が認められます。この拠出期間が5年増えた場合、138万円(年額27万6,000円×5年)まで拠出額を増やせる仕組みです。
ただし、60歳以降からiDeCoを始める場合、以下の条件を満たしている必要があるため注意してください。
- 国民年金に任意で加入している
- 厚生年金に加入し、会社員や公務員として勤務している
- 公的年金の繰り上げ受給をしていない
以下より、iDeCoの制度改正の内容について、詳しく解説します。
運用指図者となる空白期間がなくなる
65歳以降でもiDeCoに加入できるようになったことで、運用指図者となる空白期間がなくなります。運用指図者とは、掛金を積み立てず、今まで積み立てた資産を運用する方のことです。
従来の制度では、iDeCoの受給開始年齢が以下のように定められていました。
年齢 | 受給開始年齢 | 通算加入者等期間 |
50歳未満 | 60〜75歳 | 10年以上 |
50歳以上52歳未満 | 61〜75歳 | 8年以上10年未満 |
52歳以上54歳未満 | 62〜75歳 | 6年以上8年未満 |
54歳以上56歳未満 | 63〜75歳 | 4年以上6年未満 |
56歳以上58歳未満 | 64〜75歳 | 2年以上4年未満 |
58歳以上60歳未満 | 65〜75歳 | 1ヵ月以上2年未満 |
50歳以上でiDeCoに加入した場合、60歳になったタイミングで掛金を受け取ることはできません。
この改正前の制度により、50歳以上でiDeCoに加入した60歳以降の方は、掛金を拠出できない運用指図者となる空白期間がありました。
しかし、改正後の制度では60歳以降も掛金を拠出できるといった、空白期間をなくせる仕組みです。
65歳以降も運用のみ継続する場合、75歳まで選択できる
iDeCoの新制度では65歳まで掛金を拠出できるようになったため、65歳以降は運用を継続するかを選べます。
ここで運用を継続する運用指図者となる場合は、75歳までの年齢で期間を設定できます。
ただし、掛金を拠出せずに運用のみする場合でも、その期間は口座管理料が発生するため注意してください。
iDeCoを60歳以降から始めるメリット
iDeCoを60歳以降から始めるメリットは、以下の3つです。
- 掛金の所得控除を受けられる
- 老後資金をさらに積み上げられる
- 退職所得控除枠が少しでも大きくなる
それぞれについて解説します。
掛金の所得控除を受けられる
iDeCoを60歳以降から始めることで、掛金の全額について所得控除を受けられます。
そのため、課税対象となる所得額が減り、支払う住民税額を抑えられる仕組みです。
iDeCoに拠出する掛金をさらに増やしながら税負担を軽減できるため、将来的に受け取れる金額を増やしつつ節税したい方におすすめです。
ただし、口座から掛金が引き落とされる個人払込を選んでいる場合、所得控除を受けるために年末調整もしくは確定申告が必要となるため注意しましょう。
老後資金をさらに積み上げられる
iDeCoを60歳以上から始めることで、65歳まで最大5年間掛金を拠出できます。
また、毎月銀行口座から支払う元本だけでなく、運用利益についても積み立て額として認められるケースが多いため、効率的に老後資金を増やしたい方におすすめです。
退職所得控除枠が少しでも大きくなる
iDeCoの加入期間が増えることで、退職所得控除の金額が大きくなります。
退職所得控除は退職一時金以外の所得と分けて算出されるため、受け取った金額の合計額ではなく、退職所得のみに税金が発生します。
iDeCoの掛金を受け取る際は、運用指図者の期間を除いたiDeCoの加入年数が、一般的な退職所得控除を算出する際の勤続年数と同等に見なされる仕組みです。そのため、iDeCoに加入している期間が長いほど、控除額が増えます。
iDeCoを60歳以降から始めるデメリット
反対に、iDeCoを60歳以降から始めるデメリットとして、以下の2点があります。
- 老齢給付金の受け取りには通算加入者等期間の条件がある
- 投資商品であるため元本割れのリスクがある
それぞれ内容を解説しますので、iDeCoを利用すべきか考える際の参考にしてください。
加入から5年経過していないと受け取り不可
iDeCoの特徴として「原則60歳になるまで資産を引き出しできない」ことがあります。しかし、最初の掛金を拠出した加入時から10年以上経過していない場合、60歳になったタイミングであっても掛金の受け取りは認められません。
また、60歳以上でiDeCoに加入した場合、老齢給付金を受け取れるのは65歳から75歳の間までです。そのため、加入から5年を経過しないと資産を引き出すことができません。
iDeCoを始める年齢が上がるほど、受け取り可能な年齢も上がっていく点に注意しましょう。
投資商品であるため元本割れのリスクがある
iDeCoは自分で投資信託などを購入して運用する投資商品であるため、元本割れのリスクがあります。
60歳からの短い加入期間で利益を増やしていくには、適切な商品を選ぶことに加え、リスク管理をしっかりと行うことが欠かせません。
商品選びに迷った際は投資のプロに相談し、加入期間や運用目的に合った商品を選びましょう。
60歳になったらiDeCoの掛金を受け取るために必要な手続き
iDeCoの加入者が60歳以降に掛金の受け取りを希望する際、受給の申請手続きが必要です。
また、受け取り方は3つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
以下より、iDeCoの掛金を受け取る際に必要な手続きや受け取り方法、注意点を解説します。
受給の申請手続きをする
60歳以降でiDeCoの掛金を受け取りたい場合、時給の申請手続きが必要です、
受給開始年齢は通算加入者等期間によって異なりますが、iDeCoで支払った掛金は自動的に受け取り開始されるわけではありません。
加入期間に合わせて60歳から75歳までの間で受け取り時期を選べるため、ご自身にとって最適な受け取りのタイミングで受給の申請手続きをしましょう。
受け取り方は全部で3種類
iDeCoの掛金を受け取る際、受け取り方は以下の3種類から選べます。
- 一時金として受け取る(一括)
- 年金として受け取る(分割)
- 一括・分割を併用して受け取る
それぞれのパターンについて、詳しく解説します。
一時金として受け取る(一括)
iDeCoを一時金として一括で受け取る場合、その資産は「退職所得」として扱われます。この形式で受け取った資産には退職所得控除が適用されるため、控除の範囲内であれば課税されることなく受け取り可能です。
退職所得控除は、長期間にわたって積み立てた資産を受け取る際に適用される特別な控除制度です。これを利用することで、節税効果を最大限に享受することができます。
特に、長年にわたって掛金を積み立ててきた方にとって、退職後の生活資金をまとめて受け取れる点は大きなメリットです。
年金として受け取る(分割)
DeCoを年金形式で分割して受け取る場合、5年から20年の間で受け取り期間を設定できます。この場合、受け取る資産は「雑所得」として扱われ、「公的年金等控除」が適用されます。そのため、控除範囲内であれば税負担を軽減できる仕組みです。
また、年金として分割受け取りを選ぶことで定期的に安定した収入を得られるため、老後の生活費を計画的に管理する上でも役立つでしょう。
ただし、この形式では受給期間中に毎月かかる口座管理手数料と、振込ごとに発生する振込手数料が必要です。これらの手数料を考慮した上で、総合的な受け取り額やコストを事前に把握しておくと安心です。
一括・分割を併用して受け取る
運営管理機関によっては、一時金としての受け取り方式と年金としての受け取り方式の組み合わせが可能な場合があります。
これにより、最大限の控除を享受しながら資産を短期間で効率的に受け取れるでしょう。例えば、退職所得控除の上限まで一時金として一括で受け取り、残りの資産を年金として分割で受け取るといった方法があります。
このように受け取り方を工夫することで、退職所得控除や公的年金等控除の恩恵を最大限に受けつつ、税負担を軽減できます。
75歳になっても受給申請をしないと自動的に「一括受取り」になる
75歳までにiDeCo(イデコ)の受給申請を行わない場合、自動的に一括受取りとなります。
この時点で利益が出ていれば問題はありませんが、損失がある場合でも一括でしか受け取れない点に注意しましょう。
そのため、運用状況を定期的に確認し、受取時期が近づいたら元本確保型や値動きの少ない商品に資産を移しておく、もしくは利益が出ているタイミングで早めに受給手続きを行うと安心です。
iDeCoを始める時におすすめの証券会社
iDeCoを始める時におすすめの証券会社を紹介します。
SBI証券
SBI証券は、iDeCo口座開設数1位の証券会社です。
セレクトプランでは、「eMAXIS Slim」シリーズを含むインデックスファンドを17本に投資することができます。
マネックス証券
マネックス証券は、オリコン顧客満足度®ランキング「iDeCo証券会社」部門で4年連続総合第1位を獲得しています。
「NASDAQ100指数」に連動するiDeCo商品を買うことができるのはマネックス証券だけなので、「米国ナスダック100指数」に連動する商品を買いたいならマネックス証券で口座開設を行いましょう。
松井証券
松井証券は、老舗のネット証券です。
「eMAXIS Slim」と「楽天バンガード」シリーズの取り扱いがあるので、SBI証券と楽天証券のいいところ取りをした投資を行いたい人におすすめです。
iDeCoを60歳以降から始めるメリットやデメリットまとめ
今回は、iDeCoを60歳以降から始めるメリットやデメリット、60歳以降の掛金の受け取り方などについて解説しました。
iDeCoに加入できる年齢が引き上げられたため、60歳以降の方でもiDeCoを利用して所得控除の金額を増やしたり、老後資金をさらに積み上げたりすることが可能です。
本記事で紹介した内容を参考に、受給のタイミングや受け取り方法を含めた資産運用計画を立て、老後の生活資金をしっかりと確保できるようにしていきましょう。