iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している方のなかには「ふるさと納税も始めたいと思っているが、メリットはあるの?」「そもそもiDeCoとふるさと納税って併用できるの?」と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、iDeCoとふるさと納税は併用可能です。
今回は、iDeCoとふるさと納税の仕組みを確認した上で、両制度を併用するメリットや限度額の計算方法などを解説します。iDeCoとふるさと納税を上手に活用し、節税効果を高めたい方はぜひ最後までご覧ください。
iDeCoとふるさと納税の仕組みを確認しよう
まずは、iDeCoとふるさと納税の仕組みについて、それぞれ確認しましょう。
iDeCoとは
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、公的年金に加えて個人が自ら加入でき、将来の老後の生活資金を積み立てるための個人年金制度です。加入者は自ら掛け金を設定し、その掛金を運用することで将来の年金受給額を増やせる仕組みです。
積み立てた掛け金と運用益の受け取りは、原則として60歳以降からとなります。
この制度は、加入者自身が自由に掛け金を設定できるため、個々のライフスタイルや収入に合わせた柔軟な運用が可能です。また、運用する金融商品や投資先も自由度が高く、自己責任で資産形成できることが特徴です。
iDeCoの主なメリットとして挙げられるのは、以下の3つです。
iDeCoのメリット
- 掛金は全額所得控除の対象
- 運用益は非課税で再投資可能
- 受け取り時は公的年金控除が適用される
iDeCoへの掛金は所得税や住民税の対象額から差し引かれるため、年末調整の際に所得税が軽減され、税金の負担を軽減できます。また、iDeCo内での運用益は非課税になるため、再投資することで複利効果を最大限に得られます。
さらに、iDeCoで積み立てた掛け金や運用益を受け取る際は「公的年金等控除」の対象となり、受給時にも税控除を受けられることが特長です。
ふるさと納税とは
ふるさと納税は、日本国内の市町村(ふるさと)に寄付を行うことで、その寄付額が税控除される制度です。2008年から始まったこの制度は、寄付金を使って地域振興や地域活性化を促進することを目的としています。
この制度を利用するには、寄付を行いたい市町村の指定の口座に寄付金を振り込むか、インターネットを通じて寄付を行います。寄付の際には、その市町村からの返礼品を受け取れることが一般的であり、これがふるさと納税の特徴の一つです。返礼品には地域特産品や観光券、特産品の詰め合わせなどが含まれます。
ふるさと納税の最大の魅力は、寄付金額の一部が税控除の対象になることです。これにより、寄付した金額分の税金が軽減されるため、実質的な税負担が軽くなります。また、納税先の自治体が年間で5自治体以内であれば「ワンストップ特例制度」を活用でき、確定申告をせずに寄附金控除を受けられます。
iDeCoとふるさと納税は併用できる!主なメリットとは?
冒頭でも述べていますが、iDeCoとふるさと納税の制度は併用可能です。併用した場合、両方の制度で税控除が適用されるため、節税額が大きくなるメリットがあります。
ただし、iDeCoを利用するとふるさと納税における控除の上限額が下がるため、よく検討した上で利用しなければなりません。
両制度を活用して高い節税効果を得るには、iDeCoをメインに掛け金を拠出し、上限額の中でふるさと納税を利用すると良いでしょう。
iDeCoとふるさと納税を併用した場合の限度額について、以下より詳しく解説します。
iDeCoとふるさと納税を併用すると限度額はいくら?
ふるさと納税には控除額の上限が設けられており、課税所得によって異なります。そのため、課税所得が多ければふるさと納税の上限額も高くなり、課税所得が少なければふるさと納税の上限額は低くなります。
対するiDeCoは、掛け金の全額が所得控除の対象となる仕組みです。
これにより、ふるさと納税とiDeCoを併用した場合、iDeCoの所得控除分を引いた課税所得からふるさと納税の控除限度額が算出されるため、上限額が低くなってしまいます。
しかし、ふるさと納税を利用するメリットがなくなるわけではなく、あくまで控除限度額が下がるといった仕組みであるため、限度額内でふるさと納税を利用することで節税効果を高められるでしょう。
ふるさと納税の控除額の計算方法
ふるさと納税では、自治体に寄付した金額のうち2,000円を超える部分が控除の対象(所得税・住民税)となります。
所得税・住民税の控除額の計算方法について、それぞれのパターンを解説します。
ふるさと納税を利用した場合の所得税の控除額
まずは所得税から解説します。
ふるさと納税を利用した場合の所得税の控除額は、「(ふるさと納税額 – 2,000円)× 所得税の税率」の式で求められます。なお、控除対象とされるふるさと納税の寄付金額は、所得の40%が上限となるため注意しましょう。
ふるさと納税を利用した場合の住民税の控除額
続いて、住民税の控除額は基本分・特例分のそれぞれで計算式が異なります。
住民税の基本分の控除については「(ふるさと納税額 – 2,000円)× 10%」で算出され、所得の30%を上限として金額が決まります。
住民税の特例分の控除については、住民税所得割額の2割を超えなければ「(ふるさと納税額 – 2,000円)×(100% – 10%(基本分)- 所得税の税率)」で算出します。
このとき、所得税の税率については個人住民税の課税所得から人的控除差調整額を除いた金額から計算するものであり、本来の所得税の控除額とは異なるケースがあるため注意してください。
また、住民税の特例分が住民税所得割額の2割を超えた場合は「(住民税所得割額)× 20%」の計算式で控除額を算出します。
iDeCoとふるさと納税の併用による上限額のシュミレーション(楽天)
では、実際にiDeCoとふるさと納税を併用した場合、上限額はいくらになるのでしょうか。
まずは、楽天のふるさと納税における寄付上限額のかんたんシュミレーターを使い、年収別の寄付上限額を算出してみました。あくまで目安のため、参考としてご活用ください。
年収 | 寄付上限額(目安) |
200万円 | 16,470円 |
300万円 | 29,717円 |
400万円 | 43,905円 |
500万円 | 63,075円 |
600万円 | 79,650円 |
700万円 | 110,828円 |
800万円 | 132,628円 |
※家族構成「独身」、扶養家族「いない」を選択した場合
上記はiDeCoを利用しない場合のふるさと納税の寄付上限額ですが、iDeCoとふるさと納税を併用した場合、以下のように寄付上限額が変動します。
(auの「iDeCo(イデコ)をやっている方のふるさと納税限度額シミュレーション」を利用した結果)
年収 | 寄付上限額(目安) |
200万円 | 12,000円 |
300万円 | 25,000円 |
400万円 | 39,000円 |
500万円 | 58,000円 |
600万円 | 74,000円 |
700万円 | 104,000円 |
800万円 | 126,000円 |
※配偶者「なし」、扶養家族「なし」を選択した場合
※毎月のiDeCo掛け金を10,000円とした場合
詳しくは、iDeCoの掛け金や世帯の状況によって異なるものの、上記の金額が実質負担額を2,000円に抑えてふるさと納税に寄付できる上限額となります。
iDeCoを始める時におすすめの証券会社
iDeCoを始める時におすすめの証券会社を紹介します。
SBI証券
SBI証券は、iDeCo口座開設数1位の証券会社です。
セレクトプランでは、「eMAXIS Slim」シリーズを含むインデックスファンドを17本に投資することができます。
マネックス証券
マネックス証券は、オリコン顧客満足度®ランキング「iDeCo証券会社」部門で4年連続総合第1位を獲得しています。
「NASDAQ100指数」に連動するiDeCo商品を買うことができるのはマネックス証券だけなので、「米国ナスダック100指数」に連動する商品を買いたいならマネックス証券で口座開設を行いましょう。
松井証券
松井証券は、老舗のネット証券です。
「eMAXIS Slim」と「楽天バンガード」シリーズの取り扱いがあるので、SBI証券と楽天証券のいいところ取りをした投資を行いたい人におすすめです。
iDeCoとふるさと納税の併用に関するよくある質問
ここでは、iDeCoとふるさと納税の制度を併用する場合について、よくある質問をまとめました。
iDeCoとふるさと納税を併用すると上限額はどれくらい減る?
ふるさと納税の控除の上限額は、課税所得によって異なるため、iDeCoとふるさと納税を併用する場合はふるさと納税の控除額の上限が下がることになります。
具体的には、iDeCoで拠出した掛け金の全額が所得控除の対象となり、課税所得が低くなるため、iDeCoの所得控除分を引いた後の課税所得からふるさと納税の控除限度額が算出されることで上限額が低くなる仕組みです。
ただし、これによってふるさと納税のメリットがなくなるわけではなく、限度額内で利用することで節税効果を高められます。自身の所得状況を把握し、ふるさと納税への寄付額について十分に検討することが欠かせません。
iDeCoとふるさと納税の併用でもワンストップ特例の申請は必要?
結論、ワンストップ特例の申請は必要です。
ワンストップ特例とは、納税先の自治体が年間で5自治体以内であれば確定申告をしなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる制度をいいます。
ワンストップ特例制度を利用するためには、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入して自治体へ送付する必要があり、これはiDeCoとふるさと納税を併用する場合も同様です。
ふるさと納税・iDeCo・NISAの控除額の計算方法は?
個人が行うことのできる節税対策の制度として、ふるさと納税・iDeCo・NISAなどがあります。
それぞれの制度における控除額の計算方法については、以下の通りです。
ふるさと納税・iDeCo・NISAの控除額の計算方法
- ふるさと納税:課税所得に応じて寄付金の上限額が算出される(最低2,000円は自己負担)
- iDeCo:年金の加入資格に沿って拠出金の上限額が算出される(最低月5,000円から拠出可能)
- NISA:課税所得や年金の加入資格による限度額の変動は無し
新NISAの場合、年間の非課税投資上限額は成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円となっており、非課税保有限度総額については1,800万円(そのうち成長投資枠は1,200万円)です。
まとめ:iDeCoとふるさと納税の併用はできる!
今回は、iDeCoとふるさと納税の制度は併用できるのかどうか、併用した場合はどのように限度額が変わるのかについて解説しました。iDeCoとふるさと納税を利用する場合、ふるさと納税の寄付金上限が下がりますが、限度額の中で自治体へ寄付を行うことで節税効果を高められるでしょう。
記事の内容を参考にiDeCoとふるさと納税などの制度を活用し、自身に合った方法で節税対策・資産形成を行っていきましょう。