資産運用を始める上で、「iDeCoと新NISAのどちらを使うべき?」「2つの制度は併用できるの?」のように疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。特に2024年から新たに始まった新NISAは、今までと制度内容が大きく異なるため、どれを選ぶべきか迷う方も少なくありません。
今回は、iDeCoと新NISAのそれぞれについて概要を解説した後、おすすめの併用パターンを紹介します。iDeCoと新NISAを活用して賢く資産形成していきたい方は、ぜひ参考にしてください。
iDeCoと新NISAは併用できない?併用できる組み合わせとは?
結論からいうと、iDeCoと新NISAを併用することは可能です。
NISAの制度改正により、新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の併用もできるようになったため、以下3パターン全ての組み合わせで併用できます。
- iDeCoと新NISAのつみたて投資枠
- iDeCoと新NISAの成長投資枠
- iDeCoと新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠
それぞれの制度について、概要やメリット・デメリットを簡単に確認しておきましょう。
iDeCoとは?概要やメリット・デメリットを確認
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金に加えて個人が任意で加入できる私的年金制度です。この制度は2001年から開始され、2024年1月時点での加入者は320.7万人*に拡大しています。
*参照:トップ > ライブラリ > 業務状況|iDeCo公式サイト
iDeCoに加入できるのは20歳以上65歳未満の人が対象で、掛金は月額5,000円から設定できます。なお、掛金は年1回、1,000円単位で変更でき、掛金の上限は職業によって異なる仕組みです。
また、掛金は全額所得控除され、運用益も非課税となります。原則として60歳から引き出し可能で、引き出し方法は「一時金・年金・または一部一時金と一部年金の組み合わせ」から選択します。もし75歳までに選択がない場合、自動的に一時金として給付されます。
iDeCoのメリット
iDeCo(個人型確定拠出年金)のメリットは、所得控除や退職所得控除などを利用できる節税効果にあります。
掛金が全額所得控除となるため、例えばサラリーマンが毎月2万円を積み立てた場合、年間24万円が総所得から控除されます。これによって所得が低くなり、所得税と住民税が軽減されます。
さらに、iDeCoは運用益が非課税になることもメリットの一つです。一般的な投資では利益に約20%の税金が発生しますが、iDeCoでは利益をそのまま受け取れます。掛金の受取時にも退職所得控除や公的年金等控除を活用できるため、税金面での優遇措置が多いことが特長です。
iDeCoのデメリット
反対に、iDeCo(個人型確定拠出年金)のデメリットは、原則として60歳以降にならなければ引き出せないことです。
これにより、老後資金を確実に運用できる利点もありますが、好きなタイミングでの現金化を望む人にとっては制約となるでしょう。数年後、十数年後にまとまった資金が必要な場合や、緊急事態に備えてお金を準備したい場合には、iDeCoではなく別の資産運用方法を検討する必要があります。
iDeCoを活用する際には、長期的な視野で運用することが前提となることを押さえておきましょう。
新NISAのつみたて投資枠とは?概要やメリット・デメリットを確認
つみたて投資枠とは、2023年までのNISA制度である「つみたてNISA」を引き継ぐものです。旧制度では、つみたてNISAか一般NISAのいずれかを選択する必要がありましたが、新制度ではつみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能となりました。
つみたて投資枠の特徴は、以下の通りです。
- 年間投資枠:120万円
- 非課税保有限度額:1,800万円
- 非課税保有期間:無期限
- 投資可能期間:恒久化
- 投資対象商品:長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託
- 対象年齢:18歳以上
参照:新しいNISA|金融庁
つみたて投資枠のメリット
新NISAのつみたて投資枠のメリットは以下の通りです。
- 非課税で運用できる
- 手間をかけずに運用できる
- 安定的な投資成果が期待できる
- 厳選された銘柄から選べる
つみたて投資枠で購入した商品を運用し、得た利益は非課税となります。そのため、課税口座で運用する場合と比べて、手元に多くの利益を残せることが特長です。また、つみたて投資枠では自動積立を設定するだけで毎月定額の投資が自動的に行われます。これにより、忙しい方でも、手間をかけずコンスタントに投資を続けやすいでしょう。
さらに、「ドル・コスト平均法」と呼ばれる、定期的に一定額を投資する積立投資が可能です。そのため、長期的な運用においてリスクを分散し、安定的な成果が期待できます。
そのほか、つみたて投資枠で購入できる銘柄は、金融庁が厳選した長期の積立・分散投資向きの投資信託に限らるため、投資初心者でもリスクを最小限に抑えた長期的な資産形成が可能となります。
つみたて投資枠のデメリット
反対に、新NISAのつみたて投資枠にはいくつかのデメリットも存在します。
- すぐに利益を得るのは難しい
- 年間120万円を超えて投資することはできない
- 上場株式は購入対象外である
- 17歳以下は利用できない
投資信託は株式などに比べて値動きが小さいため、即座に利益が出る可能性は低く、短期間で大きな利益を得ることは難しいといえます。長期的な視点でコツコツと積み立てることが大切です。
また、つみたて投資枠で購入できる投資信託は年間で120万円であるため、1年間を通して毎月同額を積み立てるのであれば、毎月の積立額は最大10万円となります。年間120万円を超えて投資することはできないため、上限額を超える余裕がある方は、成長投資枠を利用する方法があります。
そのほか、つみたて投資枠では、長期の積立・分散投資に適した投資信託のみを購入できるため、上場株式は購入できません。上場株式を購入したい場合は、成長投資枠を利用しましょう。
なお、新NISAの対象は18歳以上の成人に限られます。17歳以下の方は新NISA口座を開設できないため、つみたて投資枠を含め新NISAは利用できません。
新NISAの成長投資枠とは?概要やメリット・デメリットを確認
新NISAの成長投資枠では、つみたて投資枠の対象商品に加え、対象外となる上場株式などの商品を購入可能です。
2024年の制度改定でつみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能となったため、以前のNISAでは行えなかった「つみたてNISAの商品に投資しながら、対象外の商品に非課税で投資する」こともできます。
成長投資枠の特徴は、以下の通りです。
- 年間投資枠:240万円
- 非課税保有限度額:1,200万円
- 非課税保有期間:無期限
- 投資可能商品:上場株式・投資信託等
- 対象年齢:18歳以上
参照:新しいNISA|金融庁
成長投資枠のメリット
新NISAの成長投資枠には、以下のメリットがあります。
- 非課税で運用できる
- 保有株式の配当も非課税
- スポット購入・積立投資の両方に対応
- 対象商品が豊富
つみたて投資枠と同じように、成長投資枠で購入した商品の利益も非課税となります。なお、成長投資枠で保有している銘柄の配当についても非課税です。
また、つみたて投資枠では投資信託のみが購入対象ですが、成長投資枠は対象商品が上場株式・投資信託・ETF・REITなど豊富にあることが特長です。
さらに、成長投資枠ではスポット購入だけでなく、毎月少額の積立投資にも対応しています。これにより、つみたて投資枠で購入している投資信託を成長投資枠で上乗せするといった運用も可能です。
成長投資枠のデメリット
反対に、新NISAの成長投資枠には以下のデメリットも存在します。
- 損益通算や繰越控除には非対応
- 年間240万円を超えて投資することはできない
- 17歳以下は利用できない
成長投資枠で購入した商品の損失が出た場合、課税口座と損益通算をしたり繰越控除をしたりすることはできません。損失が出ても他の利益と相殺できないため、値動きの大きい商品を購入する場合、このようなリスクも考慮する必要があります。
また、成長投資枠の年間投資枠は240万円までであり、この枠を超える金額の投資はできません。なお、商品を売却して年間投資枠を再利用することもできないため、計画的な投資が必要です。
そのほか、つみたて投資枠と同じように、成長投資枠の利用も18歳以上の成人が対象となる点に注意しましょう。
iDeCoと新NISAはどう組み合わせるべき?2つの併用シュミレーション
iDeCoと新NISAを併用する場合、投資枠をどう組み合わせるべきか、どのような商品を選んで運用すべきか迷ってしまうことも多いでしょう。
ここでは、数年後に必要となるまとまった資金を作りつつ老後の資産形成を行いたい方向けの「攻めのポートフォリオ」と、非常事態に備えた積立と老後の資産形成を目指す方向けの「守りのポートフォリオ」についてそれぞれご紹介します。
ただし、紹介する例はあくまで参考とし、ご自身のライフステージや資産計画に合わせた最適なポートフォリオを考えてみてください。
攻めのポートフォリオ(例:30代のサラリーマン)
「これからマイホームの購入や子どもの大学進学の予定があり、近い将来のための資金を準備しつつ、老後資金もコツコツ積み立てたい」と考えている30代サラリーマンのAさんは、月に5万円の余剰資金があります。
Aさんはこの場合、新NISAに月3万5,000円、老後の資産形成も考慮してiDeCoに月1万5,000円を回す予定です。
毎月の拠出額 | ポートフォリオ例 | |
新NISA | 3万5,000円 | 株主配当のある国内株式:30% S&P500と連動する投資信託:30% 高いリターンを狙えそうな米国株:40% |
iDeCo | 1万5,000円 | 全世界株式と連動する投資信託:50% S&P500と連動する投資信託:50% |
新NISAの国内株式で家計を節約しつつ投資効果を期待し、アメリカの主要500銘柄に分散投資可能なS&P500も購入します。加えて、米国株で高いリターンを狙います。
また、iDeCoでは海外株に分散投資できる全世界株式と投資家に人気のS&P500に、それぞれ50%ずつ購入する予定です。
守りのポートフォリオ(例:40代の自営業)
「子どもがある程度大きくなってきたため、老後の資産形成を重視した運用をしたい」という40代自営業のBさんは、月に4万円の余剰資金があります。
Bさんはこの場合、新NISAに月1万円、iDeCoに月3万円を回す予定です。
毎月の拠出額 | ポートフォリオ例 | |
新NISA | 1万円 | 全世界株式と連動する投資信託 |
iDeCo | 3万円 | 国内外の株式や債券、不動産に分散投資が可能なバランスファンド |
インデックスファンドとバランスファンドを組み合わせ、安定した運用成績を狙います。
iDeCoを始める時におすすめの証券会社
iDeCoを始める時におすすめの証券会社を紹介します。
SBI証券
SBI証券は、iDeCo口座開設数1位の証券会社です。
セレクトプランでは、「eMAXIS Slim」シリーズを含むインデックスファンドを17本に投資することができます。
マネックス証券
マネックス証券は、オリコン顧客満足度®ランキング「iDeCo証券会社」部門で4年連続総合第1位を獲得しています。
「NASDAQ100指数」に連動するiDeCo商品を買うことができるのはマネックス証券だけなので、「米国ナスダック100指数」に連動する商品を買いたいならマネックス証券で口座開設を行いましょう。
松井証券
松井証券は、老舗のネット証券です。
「eMAXIS Slim」と「楽天バンガード」シリーズの取り扱いがあるので、SBI証券と楽天証券のいいところ取りをした投資を行いたい人におすすめです。
新NISAを始めるときにおすすめな証券会社
新NISAを始めたら、多くの人はその証券会社を利用し続けることになります。
証券会社の選び方は人それぞれですが、「クレジットカード積立のポイント還元率」「操作性・UI」を重視して選ぶ方が多いです。
メジャーな証券会社である「SBI証券」「楽天証券」「auカブコム証券」「マネックス証券」の比較表を以下に作成したので、自分に合った証券会社を選んでください。
SBI証券 | 手数料が格安
SBI証券は業界トップのシェア率を誇っており、手数料が格安という特徴があります。
手数料には「スタンダードプラン」「アクティブプラン」の2つのプランがあり、スタンダードプランの手数料は55円〜、アクティブプランは1日の約定代金が100万円までなら無料です。プランは途中で変更が可能なので、投資スタイルに合わせて好きなプランを選択しましょう。
なお、以下の条件を満たすと国内株式売買手数料が無料(ゼロ革命)となります。
- インターネットコースまたは、インターネットコース(プランC)のお客さま
- 電子交付サービス申込済で当社所定の電子交付設定を行っているお客さま
また、外国株式を全部で9カ国扱っており、証券会社の中では最多となっています。
- 米国株式
- 中国株式
- 韓国株式
- ベトナム株式
- ロシア株式
- インドネシア株式
- シンガポール株式
- タイ株式
- マレーシア株式
三井住友カードでの積立投資をおこなうと、積立額の0.5%~5.0%相当のVポイントがたまります。クレジットカード積立投資の上限は5万円となるので、三井住友カードを利用すると250円〜2500円お得になります。
また、SBI証券は1株から取引できるS株(単元未満株)も取り扱っているので、高配当株の投資にもおすすめです。
auカブコム証券 | 携帯キャリアがauならおすすめ
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プチ株と呼ばれる1株から投資できるサービスもあるので、高配当株をはじめとした個別株に挑戦してみたい人にもおすすめです。
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iDeCoと新NISAの併用についてよくある質問
ここでは、iDeCoと新NISAの併用についてよくある質問をまとめました。
「新NISAが始まったからiDeCoはいらない」と聞いたけど、実際どうなの?
新NISAとiDeCoはそれぞれ異なる特徴を持つため、「新NISAを運用すればiDeCoは必要ない」とは言い切れません。
新NISAは、短期から長期まで投資期間を柔軟に調整できる、株式や投資信託など幅広い商品を選べるなどの特徴があります。対するiDeCoの特徴は、老後の資産形成に特化し、金融庁が選ぶ投資信託を中心とした商品が対象であることです。
受け取り時の控除や解約・引き出し可能なタイミングなども異なるため、自身の投資計画に合わせて選ぶ必要があるでしょう。
iDeCoとつみたて投資枠で同じ銘柄を選んでも良いの?
iDeCoと新NISAのつみたて投資枠で同じ商品を選ぶことは可能です。
ただし、リスクヘッジの観点から考えると、分散投資となるようポートフォリオを調整した方が安全かもしれません。
iDeCoと新NISAならどっちを優先すべき?
iDeCoと新NISAのそれぞれにメリット・デメリットが存在するため、一概に「どっちを優先すべき」とは言い切れません。
加入可能な年齢や年間投資上限額、控除制度、対象商品などが異なります。また、iDeCoは原則として60歳まで引き出し不可であるのに対し、NISAはいつでも解約・売却が可能といった特徴もあるため、年齢やライフステージ、資産状況などに合わせて選ぶ必要があるでしょう。
iDeCoとNISA口座は分けるべき?
iDeCoとNISAの口座は、ひとまとめにしても、別々にしても、特に運用に支障はありません。
なお、いずれも口座開設後に金融機関を変更できるため、変更が必要になった場合は手続きを行うことで対応してもらえます。
iDeCoと新NISAを併用する上で押さえておきたいポイントまとめ
今回は、iDeCoと新NISAを併用する上で押さえておきたい制度のポイントやおすすめの併用パターンなどを紹介しました。
iDeCoと新NISAは制度の内容が大きく異なるため、両制度の特徴を理解した上で、ご自身の投資計画に合わせた運用方法を検討しましょう。