「iDeCoは60歳まで解約できないと聞いたけど、加入者が死亡したらどうなるの?」「死亡一時金を受け取るとき、税金はかかるの?」といったように、iDeCo加入者の死亡時について疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
今回は、iDeCo加入者の死亡時に必要な手続きや資産の受取人などについて、詳しく解説します。
iDeCo加入者の死亡時は遺族が資産を受け取れる
iDeCo(個人型確定拠出年金)加入者が死亡した際、その口座内の資産は売却され、配当金も含めた全額が死亡一時金として遺族に支払われます。
なお、死亡一時金の支払いは現金一括で行われ、年金形式での支払いはないため注意しましょう。
iDeCo加入者の死亡時に受け取る死亡一時金は非課税?
iDeCo加入者が死亡し、死亡一時金を受け取る際は税金が発生します。また、死亡一時金を受け取る時期によって課税対象となる項目が異なります。
- 死亡から3年以内に支給される場合
- 死亡から3年以上かつ5年以内に支給される場合
- 死亡から5年以上が経過した場合
それぞれのパターンについて、課税の方法を解説します。
死亡から3年以内に支給される場合は相続税の課税対象
iDeCo加入者が死亡した際に支給される死亡一時金ですが、加入者本人の死亡から3年以内に支給される場合は、相続税の課税対象となります。
この場合、相続税法上の「みなし相続財産」として扱われ、遺族が受け取る一時金の一部が相続税の課税対象となる仕組みです。なお、非課税部分については一定の範囲内である「500万円×法定相続人の数」までが対象となります。
この規定により、遺族が受け取る一時金が一定額以下であれば相続税の負担が軽減されるため、可能であれば死亡から3年以内に申請すると税金の支払額を抑えられるでしょう。
死亡から3年以上かつ5年以内に支給される場合は一時所得の課税対象
iDeCo加入者の死亡時に受け取る死亡一時金について、加入者の死亡から3年以上かつ5年以内に支給される場合は「一時所得」として課税されます。この場合、受け取った一時所得はその年の所得税の対象となり、一時所得の金額に応じて課税される仕組みです。
また、一時所得として受け取る場合は、死亡者の他の資産(不動産・現金等)と同じく相続財産として取り扱われます。
死亡から5年以上が経過すると死亡一時金を受け取れない
iDeCo加入者の死亡時に受け取る死亡一時金ですが、加入者の死亡から5年以上が経過した場合、死亡一時金の受け取りができなくなります。この場合、遺族や受取順位にかかわらず、iDeCo口座内の資産は支払われることなく、法務局に供託されてしまいます。
このため、遺族が死亡一時金を受け取るためには、死亡後5年以内に手続きを行うことが必須です。
iDeCo加入者の死亡時に資産を受け取るのは誰になる?
iDeCo加入者が死亡した場合、死亡一期人の受け取り順位によって受け取る人が決まります。
ここでは、誰が受取人になるのかについて、詳しく解説します。
死亡一時金の受け取り順位
iDeCoの加入者が死亡した場合、その資産がどのように遺族に受け継がれるかは、死亡一時金の受け取り順位によって決まります。この受け取り順位は法令で定められており、通常の相続順位とは異なるものです。
まず、iDeCoの死亡一時金の受け取り優先順位は次のように定められています。
- 配偶者
- 加入者等の収入によって生計を維持していた親族
- 加入者等の収入によって生計を維持していたその他の親族
- その他の親族
1位の「配偶者」は、優先順位の1位に位置します。配偶者が存在する場合、その配偶者が優先して死亡一時金を受け取るのが一般的です。
2位の「加入者等の収入によって生計を維持していた親族」については、加入者の子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹が含まれます。ただし、加入者が死亡する前に受取人を指定していない場合に限られるものです。受取人の指定については、次の項で解説します。
3位の「加入者等の収入によって生計を維持していたその他の親族」については、加入者等の収入によって生計を維持していた2位以外の親族が、第3位の優先順位に位置します。
そして、4位の「その他の親族」には、2位に該当しない子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹が該当します。
このように、加入者の収入によって生計を維持していたことが重視され、特に第2位以降の順位においてその影響が大きく現れます。さらに、配偶者については、事実上の婚姻関係にある場合でも、加入者の収入によって生計を維持していたことを証明できる書類があれば対象です。
なお、同じ順位に複数の対象者が存在する場合には、その人数で資産が等分されることになります。
これらの規定に基づき、iDeCo加入者が死亡した場合には、遺族は適切な手続きを行うことで死亡一時金を受け取れる仕組みです。
事前に受取人を指定することも可能
iDeCo加入者が死亡した際、通常は法令で定められた相続順位に則り、死亡一時金が配偶者や親族に支給されます。しかし、加入者が事前に受取人を指定することも可能です。
この場合、受け取り順位に関わらず、加入者が指定した受取人に一時金が支給されます。ただし、誰でも受取人に指定できるわけではなく、指定可能な受取人は配偶者、子、父母、孫、祖父母、または兄弟姉妹に限られます。
受取人を指定する場合は、iDeCoの運営管理機関や、確定拠出年金の管理を行っている日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社(JIS&T社)に問い合わせて手続きを行う必要があります。
このように、事前に受取人を指定することで、加入者は自身の意思に基づいて資産の相続手続きを行うことができ、遺族への負担を軽減できます。
iDeCo加入者の死亡時に遺族や受取人が必要な手続き
iDeCo(個人型確定拠出年金)加入者が死亡した場合、遺族や受取人は、死亡一時金を受け取るために「裁定請求」と呼ばれる手続きを行います。この手続きは、iDeCoの記録管理を担当する会社である記録関連運営管理機関に申し出て行うものです。
死亡一時金を受け取るための手続きとして、以下の手順で進めましょう。
- 必要書類の取得
- 書類の記入と提出
- 裁定の完了と支払い
まず、裁定請求を行うために必要な書類を取得しましょう。具体的には、金融機関の加入者死亡届と裁定請求書と受取人、マイナンバーカード(もしくはマイナンバーがわかる書類)、受取人の印鑑証明書が必要です。加えて、受け取り順位や受け取り人数に応じた必要書類も用意します。
次に、取得した書類に必要事項を記入し、裁定請求に必要な書類とともに記録関連運営管理機関に提出しましょう。提出された書類をもとに記録関連運営管理機関が裁定を行い、裁定が完了すると指定された口座に死亡一時金が振り込まれます。
上記の手順により、iDeCo加入者の死亡一時金を受け取れます。加入者は、生前に適切な情報提供を行い、家族にiDeCoの存在や必要な手続きについて説明しておく、万一の事態に備えて家族にiDeCoのコールセンターの番号を知らせておくといった対応をしておくと安心です。
iDeCo加入者の死亡時に関してよくある質問
ここでは、iDeCo加入者の死亡時に関するよくあるしつもんをまとめました。
iDeCoで受け取れる死亡一時金の金額は?
iDeCoで受け取れる死亡一時金の金額は、加入者の運用年数や運用状況によって異なります。
iDeCo加入者が死亡した場合、iDeCo口座に入っている、配当金を含めた全資産が死亡一時金として遺族に支払われます。なお、死亡一時金は現金一括での支払いに限定されており、年金形式で受け取ることはできません。
iDeCo加入者の死亡時に楽天証券で必要な手続きは?
iDeCo加入者が亡くなった場合、積み立てた資産は死亡一時金として給付されます。
楽天証券で死亡一時金を申請する場合は、遺族もしくは事前に指定した死亡一時金受取人からカスタマーサービスセンターへ連絡することで、必要な手続きの案内を受けられます。
カスタマーサービスセンター
iDeCo加入者の死亡時に死亡一時金を受け取る際、税金は発生する?
iDeCo加入者の死亡時に死亡一時金を受け取る際は、支給されるタイミングによって異なる税金が発生します。
死亡から3年以内に支給される場合は相続税の対象となり、遺族が受け取る一時金の一部が課税されます。また、3年以上かつ5年以内に支給される場合、一時所得として所得税の対象となります。
ただし、死亡から5年以上経過すると死亡一時金を受け取れず、手続きができないため注意しましょう。
SBI証券でiDeCoの死亡一時金の受取人指定をする方法は?
SBI証券で死亡一時金の受取人を指定したい場合、「死亡一時金受取人指定申込書」の書類を提出し、手続きする必要があります。
詳しくは、SBIベネフィット・システムのコールセンターへ問い合わせることで対応してもらえます。
問い合わせ先:03-6435-5522
iDeCo加入者の死亡時に必要な手続きまとめ
今回は、iDeCo加入者の死亡時に必要な手続きや死亡一時金の課税方法について解説しました。
iDeCo加入者が死亡した際は、法令で定められた相続順位に該当する方、もしくは事前に指定した受取人が、配当を含めた全資産を現金一括で受け取れます。また、死亡から3年以内の申請であれば一時金の一部が相続税の課税対象に、3年以上5年未満であれば一時所得として課税対象になります。
5年を過ぎると手続きできなくなってしまうため、iDeCo加入者の死亡時には必要な手続きをスムーズにできるよう、加入中から準備を進めておくと安心です。