iDeCo(個人型確定拠出年金)では、毎月決まった金額を積み立て、老後の資産を形成します。ただし、iDeCoで設定できる掛け金は職業によって上限が決まっており、上限を超える金額の積み立てはできません。
今回は、iDeCoで設定できる掛け金を職業別に紹介したのち、限度額引き上げの予定や掛け金を決める際のポイントなどについて解説します。
iDeCoにおける掛け金の上限や自分に合った掛け金を決めるコツを知りたい方は、ぜひ記事を参考にしてください。
iDeCoの掛け金上限はいくら?職種別に紹介
iDeCoで拠出できる掛け金の上限は、自営業・会社員・公務員・専業主婦(夫)の4パターンで異なります。
ここでは、それぞれの職種における掛け金の上限について、詳しく解説します。
自営業の掛け金上限は月68,000円
自営業とは、個人事業主やフリーランスなどとして収入を得ている人を指し、国民年金の第1号被保険者に該当します。この場合、iDeCoに拠出できる掛け金の上限は月額68,000円で、年額にすると816,000円です。
また、掛け金の上限は国民年金基金もしくは国民年金付加保険料を合算した上での金額となり、自営業者は上限内で掛け金を拠出できます。
会社員の掛け金上限は月12,000〜23,000円
会社員は、国民年金の第2号被保険者に該当します。この場合、企業年金の有無や企業型DC・DBへの加入状況により、以下のような掛け金の上限があります。
- 企業年金が無い場合:月額23,000円(年額276,000円)
- 企業型DCのみに加入している場合:月額20,000円(年額240,000円)
- 企業型DBのみに加入している場合:月額12,000円(年額144,000円)
- 企業型DCとDBに加入している場合:月額12,000円(年額144,000円)
項目2つ目の「企業型DCに加入している場合」においては、月額55,000円から企業型DCの掛け金を引いた金額のうち、月額20,000円を上限として拠出できます。また、項目4つ目の「企業型DCとDBに加入している場合」においては、月額27,500円から企業型DCの掛け金を引いた金額のうち、月額12,000円を上限として拠出可能です。
会社員がiDeCoで積み立てする場合、企業年金や企業型DC・DBへの加入状況により拠出可能な金額が異なるため、計算時に注意が必要です。
公務員の掛け金上限は月12,000円
公務員の国民年金は、会社員と同じ第2号被保険者に該当します。
公務員がiDeCoに拠出できる掛け金の上限は月額12,000円であり、年額144,000円までの積み立てが可能です。
専業主婦(夫)などの掛け金上限は月23,000円
会社員や公務員の配偶者の扶養に入っている専業主婦や専業主夫は、国民年金の第3号被保険者に該当します。
この場合、iDeCoに拠出できるのは月額23,000円で、年額にすると276,000円を拠出できます。
iDeCoの限度額引き上げはいつから?
上記を踏まえて、「もっとiDeCoに多くの金額を搬出できないの?」「掛け金上限が引き上げされることはないの?」と思った方がいるかもしれません。
iDeCoは今まで、掛け金の上限について何度か改正が行われており、次の改正は2024年の12月に予定されています。
改正内容は主に会社員・公務員を対象としたもので、iDeCoへの掛け金上限が引き上げられるとのことです。
現行制度の掛け金上限 | 改正後の掛け金上限 | |
企業型DCのみに加入 | 55,000円から企業型DCの掛金を引いた額(月額20,000円が上限) | 55,000円から、企業型DC・DBの掛金を引いた額(月額20,000円が上限) |
企業型DBのみに加入 | 月額12,000円 | |
企業型DC・DBに加入 | 27,500円か企業型DCの掛金を引いた額(月額12,000円が上限) |
参照:iDeCo公式サイト
この制度改正によるメリットが特に大きいのは、公務員の方です。これまでは月12,000円が掛け金の上限でしたが、改正後は月20,000円の拠出が可能となります。
iDeCoの掛け金を決める際のポイント
iDeCoでは月5,000円を最低拠出額とし、1,000円単位で掛け金を決められます。しかし、毎月の掛け金をいくらに設定すれば良いか分からないと感じている方も多いのではないでしょうか。
iDeCoの掛け金を決める際のポイントは、以下の2つです。
- 加入者の掛け金平均を参考にする
- 自身の年齢に合わせた掛け金を設定する
それぞれのポイントを確認し、自分の状況に合った拠出額を考えてみましょう。
iDeCoの掛け金の決め方①加入者の掛け金平均を参考にする
iDeCoの掛け金設定に迷った場合、まずは現在の加入者の掛け金平均を参考に決めるのがおすすめです。
加入者の掛け金平均は、iDeCoの公式サイトより確認できます。
国民年金の種類 | 掛け金の平均 | |
第1号被保険者(自営業・個人事業主・フリーランス) | 月額28,197円 | |
第2号被保険者(会社員・公務員) | 第2号被保険者の全体 | 月額14,526円 |
企業年金がある場合 | 月額16,797円 | |
企業年金がない場合 | 月額11,462円 | |
共済組合員の場合 | 月額11,005円 | |
第3号被保険者(専業主婦・主夫) | 月額14,986円 | |
加入者全体の平均 | 月額16,085円 |
参照:iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2023年12月)
各業種による平均や加入者全体の平均が公開されているため、これらの情報をもとに掛け金を決めてはいかがでしょうか。
iDeCoの掛け金の決め方②自身の年齢に合わせた掛け金を設定する
iDeCoの掛け金を決めるもう一つの方法として、自身の年齢に合わせて考えることが挙げられます。
たとえば、20代でまだ生活に余裕がない場合は掛け金を少なめに、30代・40代以降で生活に余裕が生まれてきた場合は掛け金を多めに設定すると良いかもしれません。年齢だけでなく収入や家庭の状況なども考慮して掛け金を設定することで、より安定した資産形成が行えるでしょう。
また、iDeCoの掛け金は年に一度変更でき、ライフステージの変化に応じた柔軟な積み立てが可能です。
さらに、拠出方法についても年に一度の見直しが可能であり、毎月一定の金額を積み立てるほか、年額をまとめて支払う・ボーナス月は多めに積み立てるなどの方法を選択できます。
iDeCoの掛け金に関する注意点
ここでは、iDeCoの掛け金を設定する際の注意点について、以下の2つのポイントに絞って解説します。
- 運用中の掛金変更について
- 掛金の拠出方法について
それぞれの要素を確認し、しっかりと老後資産を形成していけるようにしましょう。
iDeCoの掛け金に関する注意点①運用中の掛け金変更について
上述でもお伝えしていますが、iDeCoでは年に一度のみ、掛け金を変更できます。
iDeCoに加入している・加入予定である方は、掛け金を増やしてより多くの資産を積み立てたい、もしくは、生活がやや苦しくなり拠出が難しいため掛け金を減らしたい、といった状況が発生するケースがあるでしょう。
このようにiDeCoで運用中の掛け金を変更したい場合、運営管理機関へ「加入者掛金額変更届」の提出が必要です。
また、掛け金の変更後に「生活費が不足気味なので拠出額を減らしたい」「生活に余裕が出てきたので拠出額を増やしたい」となる場合があるかもしれません。その際は再度書類を提出して手続きする必要があるため、十分に検討した上で掛け金を変更するのがおすすめです。
iDeCoの掛け金に関する注意点②掛け金の拠出方法について
iDeCoへの掛け金の拠出は、一般的に月払いで行われますが、「面倒なのでまとめて支払いたい」「ある程度余裕のある月にまとめて支払いたい」という場合、年払いを選ぶこともできます。
ただし、企業型確定拠出年金に加入している場合は選択肢が月払いのみとなるため、注意しましょう。
掛け金の拠出方法を年払いに変更する場合、限度額や拠出期間の制約を確認した上で、掛け金変更と同じように書類を提出し手続きする必要があります。
自身の状況に合った拠出方法を選び、老後の生活を安心して送るための資産形成を実現しましょう。
iDeCoを始める時におすすめの証券会社
iDeCoを始める時におすすめの証券会社を紹介します。
SBI証券
SBI証券は、iDeCo口座開設数1位の証券会社です。
セレクトプランでは、「eMAXIS Slim」シリーズを含むインデックスファンドを17本に投資することができます。
マネックス証券
マネックス証券は、オリコン顧客満足度®ランキング「iDeCo証券会社」部門で4年連続総合第1位を獲得しています。
「NASDAQ100指数」に連動するiDeCo商品を買うことができるのはマネックス証券だけなので、「米国ナスダック100指数」に連動する商品を買いたいならマネックス証券で口座開設を行いましょう。
松井証券
松井証券は、老舗のネット証券です。
「eMAXIS Slim」と「楽天バンガード」シリーズの取り扱いがあるので、SBI証券と楽天証券のいいところ取りをした投資を行いたい人におすすめです。
iDeCoについてよくある質問
ここでは、iDeCoに関してよくある質問を3つまとめました。
iDeCoに加入しようか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
上限額の引き上げはいつから?会社員の場合はどうなる?
iDeCoは、2024年12月に改正が行われ、掛け金上限が引き上げられる予定です。
この改正は会社員・公務員に影響するもので、企業型DC・DBの加入状況によっては大幅に掛け金が引き上げられます。
まず、現行制度における掛け金の上限は以下の通り。
- 企業型DCのみに加入している場合:月額55,000円から企業型DCの掛金を引いた額(最大20,000円)
- 企業型DBのみに加入している場合:月額12,000円
- 企業型DC・DBに加入している場合:月額27,500円から企業型DCの掛金を引いた額(最大12,000円)
上記に対し、改正によっていずれの場合も「55,000円から、企業型DC・DBの掛金を引いた額(最大20,000円)」の掛け金設定が可能となります。
毎月12,000円の積立だと意味ないって本当?
「iDeCoは少ない掛け金だと意味がない」という意見を耳にしたことがあるかもしれませんが、そうとは限りません。
毎月12,000円の積立であっても、長期的に取り組むほど税制面のメリットが大きく、さらに投資信託の運用成績によって運用益を得られる可能性があります。
ただし、元本変動型の商品は市場の環境によって価格が変動するため、必ずしも運用益が発生するとは限りません。場合によっては元本割れするリスクも頭に入れつつ、運用方法を検討しましょう。
月々の限度額の調べ方は?
iDeCoにおける月々の拠出限度額は職種によって異なり、それぞれ以下の通りです。
- 自営業:月68,000円
- 会社員:月12,000〜23,000円(企業年金の有無や企業型DC・DBへの加入状況によって異なる)
- 公務員:月12,000円
- 専業主婦(夫):月23,000円
また、拠出限度額についてはiDeCoの公式サイトでも確認できます。
iDeCoの掛け金の上限まとめ
今回は、iDeCoにおける掛け金の上限や上限引き上げの予定について解説しました。iDeCoでは、月5,000円を最低拠出金額とし、職種によって12,000円から68,000円までの掛け金を設定できます。
「iDeCoを始めたいがいくら拠出すべきか迷っている」という方は、お伝えした掛け金を決める際のポイントを参考に、最適な資産の形成方法を考えてみてください。