iDeCoの利用を考えている方の中には「毎月いくら積み立てるべき?」「月1万円だと意味ないって聞いたけど、本当なの?」と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、月1万円の積立であっても、長期的に運用することで投資効果を得られる可能性が高いといえます。
今回は、iDeCoで毎月1万円を積み立てた場合の運用シュミレーションやiDeCoで注意すべきデメリットなどを紹介します。iDeCoで将来の資産を形成したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
iDeCoは毎月1万円だと意味ない?年数別のシュミレーション結果
「iDeCoは毎月1万円だと意味がない」という意見を聞いたことがあるかもしれませんが、実際の運用結果はどうなるのでしょうか。
ここでは、楽天証券の節税シュミレーションを使い、月1万円を10年・20年・30年間と積み立てた場合の運用益と節税効果について、それぞれ紹介します。
月1万円を10年間積み立てた場合の運用益・節税効果
年収600万円の会社員が、iDeCoで月1万円の積み立てを10年間続けた場合、以下のような結果となりました。
運用利率 | 1% | 3% | 5% |
積立元金 | 1,200,000円 | 1,200,000円 | 1,200,000円 |
運用益 | 61,499円 | 197,414円 | 352,823円 |
合計金額 | 1,261,499円 | 1,397,414円 | 1,552,823円 |
10年間の節税額 | 240,000円 | 240,000円 | 240,000円 |
月1万円を20年間積み立てた場合の運用益・節税効果
次に、同条件で月1万円の積み立てを20年間続けた場合について、結果は以下です。(年収600万円の会社員)
運用利率 | 1% | 3% | 5% |
積立元金 | 2,400,000円 | 2,400,000円 | 2,400,000円 |
運用益 | 255,612円 | 883,020円 | 1,710,337円 |
合計金額 | 2,655,612円 | 3,283,020円 | 4,110,337円 |
20年間の節税額 | 480,000円 | 480,000円 | 480,000円 |
月1万円を30年間積み立てた場合の運用益・節税効果
続いて、10年・20年の場合と同条件で月1万円の積み立てを30年間続けた場合、以下のような結果となりました。(年収600万円の会社員)
運用利率 | 1% | 3% | 5% |
積立元金 | 3,600,000円 | 3,600,000円 | 3,600,000円 |
運用益 | 596,282円 | 2,227,369円 | 4,722,586円 |
合計金額 | 4,196,282円 | 5,827,369円 | 8,322,586円 |
30年間の節税額 | 720,000円 | 720,000円 | 720,000円 |
iDeCoは月1万円だと意味ないって本当?注意したい7つのデメリット
上記のシュミレーション結果からも分かるように、月1万円のiDeCoでの積み立ては、長期的に続けることでより高い効果を得られます。とはいえ、iDeCoを利用するにあたっていくつかデメリットが存在するため、理解した上で利用を検討する必要があるでしょう。
ここでは、iDeCoのデメリットについて以下の7項目を解説します。
- 原則として60歳まで引き出せない
- 加入時や移動時に手数料が発生する
- 自分で手続きをする必要がある
- 職業によって掛け金の上限が異なる
- 元本変動型の投資信託は元本割れのリスクがある
- 必ずしも加入できるとは限らない
- 受給時の受け取り方法によって課税対象となる
それぞれのデメリットについて確認しましょう。
1万円だと意味ないと言われるiDeCoのデメリット①原則として60歳まで引き出せない
iDeCoで積み立てた掛け金は、原則として60歳まで引き出すことができません。なぜなら、iDeCoは老齢給付金として受け取ることが目的であるためです。
また、60歳で掛け金を引き出すためには最低でも10年以上の加入が条件となります。もし60歳になった時点で積立年数が10年未満の場合、引き出しは最高で65歳まで順延される仕組みです。
ただし、以下の条件に該当する場合は途中解約できる可能性があります。
iDeCoで途中解約する条件
- 60歳未満で企業型DCに加入していない
- 障がい給付金の受給者ではない
- 企業型DCから脱退一時金を受給していない
- 国民年金保険料の免除者である
- iDeCoもしくは企業型DCの加入資格喪失から2年以内である
- 掛金の拠出期間が1ヶ月以上以上3年以下もしくは個人別管理資産が25万円以下
これらの条件全てを満たすのは難しく、原則として60歳までは引き出せないと考えるべきでしょう。
1万円だと意味ないと言われるiDeCoのデメリット②加入時や移動時に手数料が発生する
iDeCoを利用する際、加入や資産の移動に関連して手数料が発生することがあります。
iDeCoを始める際は、金融機関での専用口座開設において加入・移換時の手数料が発生します。そのほか、口座の維持に加入者手数料や運営管理手数料が必要であり、月々の支払いが求められます。
特に、利率が低めの安全な金融商品のみを運用する場合、手数料が運用利回りを上回るリスクもゼロではありません。これらの手数料はiDeCoを利用する上でのコストとなるため、事前に注意しておくことが大切です。
1万円だと意味ないと言われるiDeCoのデメリット③自分で手続きをする必要がある
iDeCoでは、口座開設手続きや運用商品の選択など、多くの手続きを個人で行う必要があります。
厚生年金や企業年金であれば掛け金は事前に給与から引かれますが、iDeCoの場合は金融機関について情報収集した上で、自身で申込書に必要事項を記入し、本人確認書類と合わせて口座開設の手続きを進めなければなりません。
さらに、その後は運用商品を選択することが求められます。自由度が高いとも捉えられますが、これらの手続きを自分で行うのが面倒だと感じる場合、大きなデメリットとなるでしょう。
1万円だと意味ないと言われるiDeCoのデメリット④職業によって掛け金の上限が異なる
iDeCo(個人型確定拠出年金)では、職業によって毎月支払う掛け金の金額に上限が設定されています。
iDeCoの掛け金の上限
- 第1号被保険者(自営業者など):月68,000円まで
- 第2号被保険者(会社員):企業型DCへの加入状況によって異なる
- 第2号被保険者(公務員など):月12,000円まで
- 第3号被保険者(専業主婦/夫など):月23,000円まで
会社員の場合、企業型DCに加入しているか・していないかによって、以下のように掛け金上限が異なります。
- 企業型DCに加入している場合:月20,000円まで
- 企業型DC・確定給付型に加入している場合:月12,000円まで
- いずれも加入していない場合:月23,000円まで
このように職業や加入状況によって掛け金の上限が異なるため、「資金に余裕があるためもっと高い金額で積み立てをしたい」という場合に金額の制限があることはデメリットといえます。
1万円だと意味ないと言われるiDeCoのデメリット⑤元本変動型の投資信託は元本割れのリスクがある
iDeCoで元本変動型の投資信託を選択した場合、元本割れのリスクがあります。元本割れとは、投資信託の購入代金を相場が下回ることです。
投資信託の運用成績は市場環境などによって変動するため仕方がないとも言えますが、銀行口座などとは異なり、損失が発生した場合の補償はありません。そのため、元本割れのリスクを理解した上で、自己責任で運用することが求められます。
iDeCoの中でも「元本変動型の投資信託商品」を選択する場合、このリスクに対する理解と注意が必要です。
1万円だと意味ないと言われるiDeCoのデメリット⑥必ずしも加入できるとは限らない
iDeCoは誰でも加入できるわけではなく、個人の状況によっては加入対象外となるケースがあります。
具体的に、以下の条件に当てはまる場合は加入できません。
iDeCoに加入できないケース
- 65歳以上である
- 国民年金保険料が未払いである
- 企業型DCのマッチング拠出制度を選択している
- 農業者年金に加入済みである
いずれかの条件に該当する人はiDeCoには加入できないため、他の投資手段を検討する必要があるでしょう。
1万円だと意味ないと言われるiDeCoのデメリット⑦受給時の受け取り方法によって課税対象となる
iDeCoのデメリットとして、選択した受給方法により課税対象となる場合があることが挙げられます。
iDeCoでは、掛け金は所得控除の対象となり、運用益については全額非課税となります。ただし、受取時においては受給方法によって課税対象となってしまうケースがあります。
年金として受け取るのか、一時金として受け取るのかによって受給額に差が発生するため、慎重な判断が大切です。
iDeCoはデメリットしかないのは嘘!月1万円積み立てる3つのメリット
反対に、iDeCoには以下のようなメリットも存在します。
- 掛金は全額所得控除の対象となる
- 運用益は非課税で再度運用に回せる
- 受給時に控除を受けられる
それぞれのメリットについて解説します。
1万円からiDeCoを始めるメリット①掛金は全額所得控除の対象となる
iDeCoの掛け金は年間の所得税額から控除されるため、利用するだけで税金を節約できます。
例として、月1万円の掛け金で積み立てた場合、年間12万円の控除が可能です。これにより、年間の納税額を軽減できることは大きなメリットといえます。
1万円からiDeCoを始めるメリット②運用益は非課税で再度運用に回せる
iDeCoで得た運用益は非課税となるため、受け取った運用益をそのまま再度運用に回せます。
この仕組みにより、iDeCoを通じた資産形成を実現しやすいでしょう。運用益が非課税であることは、将来の老後資金を効率的に増やす上で役立ちます。
1万円からiDeCoを始めるメリット③受給時に控除を受けられる
iDeCoでは、受給時にも控除を受けられます。
運用資産の受け取り方法は2種類あり、「年金として受け取る(分割)」もしくは「一時金として受け取る(一括)」ことが可能です。
年金として受け取る場合は公的年金等控除が適用され、一時金として受け取る場合は退職所得控除が適用されます。いずれの方法でも税制優遇を受けられるため、自分に合った受け取り方法を選ぶことがポイントです。
iDeCoを始める時におすすめの証券会社
iDeCoを始める時におすすめの証券会社を紹介します。
SBI証券
SBI証券は、iDeCo口座開設数1位の証券会社です。
セレクトプランでは、「eMAXIS Slim」シリーズを含むインデックスファンドを17本に投資することができます。
マネックス証券
マネックス証券は、オリコン顧客満足度®ランキング「iDeCo証券会社」部門で4年連続総合第1位を獲得しています。
「NASDAQ100指数」に連動するiDeCo商品を買うことができるのはマネックス証券だけなので、「米国ナスダック100指数」に連動する商品を買いたいならマネックス証券で口座開設を行いましょう。
松井証券
松井証券は、老舗のネット証券です。
「eMAXIS Slim」と「楽天バンガード」シリーズの取り扱いがあるので、SBI証券と楽天証券のいいところ取りをした投資を行いたい人におすすめです。
iDeCoに関するよくある質問
ここでは、iDeCoに関してよくある質問をまとめました。iDeCoを利用すべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
iDeCoで積立すると厚生年金の受給額が減るって本当?
結論からいうと、iDeCoに加入しても厚生年金が減ることはありません。
企業の選択型DCに加入すると掛け金分の給与額が減少し、それに伴い厚生年金の受給額も減少しますが、iDeCoでは個人の資産から掛け金を拠出します。そのため、厚生年金の受給額は変わりません。
iDeCoはやらないほうがいいの?公務員の場合は?
近年では、退職金の減額や年金制度の改定がされたことにより、老後資金に対して不安を感じている公務員の方も多いかもしれません。
そのため、自身で老後資金を形成する方法の一つとして、iDeCoは有益な選択肢といえます。自身の年齢や資産状況などに合わせ、最適な資産の形成方法を検討しましょう。
iDeCoで毎月1万円の積立は意味ないと言われる理由まとめ
今回は、iDeCoは毎月1万円の積み立てでは意味がないのかどうか、実際のシュミレーション結果をもとにiDeCoの投資効果についてお話ししました。結論、毎月1万円の積み立てであっても、長期的に取り組むことで高い投資効果を得られる可能性が高いでしょう。
また、iDeCoの加入前に確認しておきたいメリット・デメリットなども紹介しましたので、自身の目的に合ったプランを計画してみてください。