節税につながる制度として「iDeCo」や「住宅ローン控除」などがありますが、併用すべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。
結論、iDeCoと住宅ローン控除を併用することで減税額を増やせる可能性があります。ただし、状況によっては節税のメリットが薄れてしまう場合もあるため、注意が必要です。
今回は、iDeCoと住宅ローン控除の仕組みを解説した上で、2つの制度を併用するメリットやデメリット、併用する際の注意点、併用した場合のシミュレーション結果を紹介します。
既に住宅ローン控除を利用しておりiDeCoを始めようか迷っている方、両制度を利用していてiDeCoの掛金を見直したいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
住宅ローン控除とiDeCoの節税の仕組みとは?
まずは、iDeCoと住宅ローン控除について、それぞれどのような仕組みで節税されるのかを確認しましょう。
住宅ローン控除における節税の仕組み
住宅ローン控除は「税額控除」を利用できる制度で、住宅ローンを組み、入居した翌年に確定申告をすることで控除を受けられます。
新築住宅であれば13年間、中古住宅であれば10年間にわたり、ローン残高の0.7%が所得税から差し引かれる仕組みです。また、所得税から差し引きしきれない場合、前年度課税所得の5%(最高9万7,500円まで)を住民税から減額できます。
2024年1月からは、住宅ローンの借入限度額が引き下げられる、省エネ基準を満たさない住宅は対象外となるといった制度変更がありました。2024年時点での住宅ローン控除の上限金額については、以下の通りです。
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 | ||
区分 | 住宅性能 | 子育て世帯・若者夫婦世帯(※1) | その他 | ||
新築・買取再販住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 13年間 | 一律0.7% |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |||
その他の住宅 | 0円(※2) | 10年間 | |||
既存住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅 | 3,000万円 | 10年間 | ||
ZEH水準省エネ住宅 | |||||
省エネ基準適合住宅 | |||||
その他の住宅 | 2,000万円 |
※2022年の税制改正後の内容を提示しています。
※2022年以前の住宅ローン控除では、控除率がローン10年目までは1%、11〜13年間は「年末残高×1%」もしくは「建物価格×2%÷3年」となり、いずれか低い額が差し引かれます。住民額の上限は年間13万6,500円です。
iDeCoにおける節税の仕組み
iDeCoは「所得控除」を利用できる制度で、住宅ローン控除のような「税額控除」よりも先に減税額が差し引かれます。
iDeCoで積み立てた掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として控除対象となり、所得税や住民税の計算前に、所得控除として差し引かれる仕組みです。
iDeCoに拠出可能な月々の限度額は、加入している国民健康保険の種類によって異なります。それぞれの限度額は以下の表をご覧ください。
加入資格 | 対象者 | 拠出限度額 |
第1号保険者もしくは任意加入被保険者 | 自営業者など | 月額6万8,000円※国民年金基金の掛金もしくは国民年金の付加保険を納付している場合、それらの金額を控除した額 |
第2号被保険者 | 企業年金がない会社員 | 月額2万3,000円 |
企業型DCにのみ加入している会社員 | 月額2万円 | |
企業型DC・DBに加入している会社員 | 月額1万2,000円 | |
DBにのみ加入している会社員 | 月額1万2,000円 | |
公務員 | ||
第3号被保険者 | 専業主婦(夫) | 月額2万3,000円 |
iDeCoと住宅ローン控除は併用できない?メリット・デメリットを解説
結論、iDeCoと住宅ローン控除は併用できます。
ここでは、iDeCoと住宅ローン控除を併用するメリットとデメリットを解説します。
iDeCoと住宅ローン控除を併用するメリット
iDeCoと住宅ローン控除を併用する最大のメリットは、税金の軽減額が増えることです。
例えば、2023年に住宅を購入した年収700万円の人が、年末時点で3,000万円の住宅ローン残高があり、iDeCoで毎月2万3,000円を積み立てる場合、年間で29万2,800円の節税効果があります。
【内訳】
- 住宅ローン控除による軽減額:21万円(ローン残高3,000万円×控除率0.7%)
- iDeCoによる軽減額:8万2,800円
※iDeCoによる軽減額はiDeCo公式サイトの「かんたん税制優遇シミュレーション」結果を参照
iDeCoと住宅ローン控除を併用するデメリット
反対に、iDeCoと住宅ローン控除を併用するデメリットとして、iDeCoの掛金は住宅ローンの繰上返済に充てられないことがあります。
iDeCoは私的年金制度のため、原則60歳になるまで掛金を引き出すことはできません。
まとまった資金ができ、住宅ローンを繰上返済したい場合でもiDeCoの掛金は使えないため、計画的かつ無理のない範囲で2つの制度を利用しましょう。
iDeCoと住宅ローン控除を併用する際の注意点
iDeCoと住宅ローン控除を併用する際、自分が支払う税額の範囲を超えると節税効果が薄れてしまいます。節税効果を最大限高めるには、所得税ではなく住民税から差し引く、iDeCoの拠出額を調整する、住宅ローンの組み方を検討するといった対策が必要です。
例えば「住宅ローン控除により所得税の全額が控除対象となっており、加えてiDeCoを始めたい」といった場合、以下の対策で控除額を調整できます。
- 住宅ローン控除を所得税から差し引きしきれない場合:住民税から控除額を差し引く
- それでも差し引きしきれない住宅ローン控除がある場合:iDeCoの拠出額を減らす
また、「iDeCoを運用中に住宅ローンを組もうとしたところ、所得税と住民税から住宅ローン控除を差し引きしきれなかった」という場合、
夫婦であればペアローンにする、フラット35を使って連帯債務とするといった対策もあります。
ただし、このやり方は夫婦で住宅ローンを組む場合に有効であり、さらに夫婦のどちらか一方が出産や育児等で仕事を辞める場合は使えないため、注意してください。
iDeCoと住宅ローン控除を併用した場合のシミュレーション
ここからは、iDeCoと住宅ローン控除を併用する効果について、年収400万円・500万円・600万円のそれぞれの場合のシミュレーション結果を紹介します。
控除の内容は個人によって異なる場合もあるため、あくまで参考としてご覧ください。
年収400万円の場合
年収400万円のAさんが以下の条件でiDeCoと住宅ローン控除を利用する場合について、減額される税金を計算します。
- 年収400万円の会社員
- 2022年に住宅を購入
- 現在の住宅ローン残高は2,000万円
- iDeCoに毎月5,000円を拠出
まず、iDeCoの控除額から見ていきましょう。
年収400万円の場合、給与所得控除を124万円/年、基礎控除を48万円/年、社会保険料控除を57万5,600円/年とします。このとき、iDeCoによる税金の軽減額は9,000円です。※iDeCo公式サイトの「かんたん税制優遇シミュレーション」結果を参照
また、住宅ローンの控除額について、Aさんの場合14万円です。
(控除額14万円=ローン残高2,000万円×控除率0.7%)
これにより、年収400万円のAさんがiDeCoと住宅ローン控除の併用によって得られる軽減額は、14万9,000円となります。
(軽減額合計14万円=iDeCoの軽減額9,000円+住宅ローンの控除額14万円)
年収500万円の場合
続いて、年収500万円のBさんが以下の条件でiDeCoと住宅ローン控除を利用する場合についての計算です。
- 年収500万円の会社員
- 2017年に住宅を購入
- 現在の住宅ローン残高は1,500万円
- iDeCoに毎月2万3,000円を拠出
まず、iDeCoの控除額から解説します。
年収500万円の場合、給与所得控除を144万円/年、基礎控除を48万円/年、社会保険料控除を71万9,500円/年とします。このとき、iDeCoによる税金の軽減額は5万2,000円です。※iDeCo公式サイトの「かんたん税制優遇シミュレーション」結果を参照
また、Bさんの場合は制度改正前の2017年に住宅を購入しているため、住宅ローンの控除額は15万円です。
(控除額15万円=ローン残高1,500万円×控除率1.0%)
これにより、年収500万円のBさんは、合計20万2,000円の税控除を受けられます。
(軽減額合計20万2,000円=iDeCoの軽減額5万2,000円+住宅ローンの控除額15万円)
年収600万円の場合
最後に、年収600万円のCさんが以下の条件でiDeCoと住宅ローン控除を利用する場合について解説します。
- 年収600万円の会社員
- 2023年に住宅を購入
- 現在の住宅ローン残高は3,000万円
- iDeCoに毎月2万3,000円を拠出
まずは、iDeCoの控除額から確認しましょう。
年収600万の場合、給与所得控除を164万円/年、基礎控除を48万円/年、社会保険料控除を86万3,400円/年とします。これにより、iDeCoによる税金の軽減額は5万5,200円です。※iDeCo公式サイトの「かんたん税制優遇シミュレーション」結果を参照
また、現在の住宅ローン残高は3,000万円なので、住宅ローンの控除額は21万円です。
(控除額21万円=ローン残高3,000万円×控除率0.7%)
上記により、年収600万円のCさんは、合計26万5,200円の税控除を受けられることがわかります。
(軽減額合計26万5,200円=iDeCoの軽減額5万5,200円+住宅ローンの控除額21万円)
iDeCoを始める時におすすめの証券会社
iDeCoを始める時におすすめの証券会社を紹介します。
SBI証券
SBI証券は、iDeCo口座開設数1位の証券会社です。
セレクトプランでは、「eMAXIS Slim」シリーズを含むインデックスファンドを17本に投資することができます。
マネックス証券
マネックス証券は、オリコン顧客満足度®ランキング「iDeCo証券会社」部門で4年連続総合第1位を獲得しています。
「NASDAQ100指数」に連動するiDeCo商品を買うことができるのはマネックス証券だけなので、「米国ナスダック100指数」に連動する商品を買いたいならマネックス証券で口座開設を行いましょう。
松井証券
松井証券は、老舗のネット証券です。
「eMAXIS Slim」と「楽天バンガード」シリーズの取り扱いがあるので、SBI証券と楽天証券のいいところ取りをした投資を行いたい人におすすめです。
iDeCoと住宅ローン控除を併用する場合の税金の軽減額まとめ
今回は、iDeCoと住宅ローン控除を併用する場合の税金の軽減額について解説しました。
iDeCoと住宅ローン控除を併用すると、2つの制度の税控除を受けられるため、税負担を抑えられるメリットがあります。ただし、控除額が自分が支払う所得税と住民税の金額を超えると節税効果を得られないため、注意してください。
記事の内容を参考に、iDeCoと住宅ローン控除をうまく活用して節税効果を高められるようにしましょう。